1986 年 59 巻 9 号 p. 505-522
上総丘陵を開析する谷の谷壁では,乾湿風化にともなう剥離作用が働いて斜面の後退が進んでいる.本稿では,茂原市北方地域の向きの異なる四つの谷壁を選定し,乾湿風化にかかわる土の性質,剥離による谷壁後退量の測定および壁面の含水状態などから,乾湿風化の発生条件を考察した.
その結果,谷壁を構成するシルト層(笠森層)がモンモリロナイトを含み,乾湿による顕著な収縮・膨潤特性をもつことが風化の重要な条件となっていることが判明した.また,乾湿風化の外的条件としては含水量の年変化が重要であり,含水量は谷壁の向きにより異なることがわかった.すなわち,年サイクルの乾湿を繰り返す北向きの谷壁では剥離量が大きく(平均3.0cm/year), 降雨時にのみ湿潤となる南向きの谷壁では剥離量が小さくなっている(平均0.5cm/year).