1987 年 60 巻 1 号 p. 1-19
梅雨季の東アジアにおける850mb面の水蒸気分布と,水蒸気輸送場および総観場との関係を季節推移の観点から考察した.日々の水蒸気輸送場を主要輸送軸の位置によりパターン分類した.水蒸気輸送パターンには固有の発現時期があり,水蒸気輸送場の季節推移様式がとらえられた.水蒸気輸送場の季節推移は, 500mb面の華南高気圧の出現・北上に対応した850mb面高度場の変化によるものである.
各水蒸気輸送パターンに対応する水蒸気分布をパターンの出現順序に並べて時系列化すると,その推移は従来の水蒸気分布の季節推移に関する研究成果と一致する.また,水蒸気輸送パターンの出現に伴う水蒸気,量変化は,水蒸気分布の季節推移に寄与するものであることがわかった.
以上のことから,梅雨季の東アジアにおける水蒸気分布の季節推移は総観場の季節推移に伴う水蒸気輸送場の変化に対応したものであることが明らかになった.