地理学評論 Ser. A
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松本盆地周辺の流域における最終氷期末期以降の地形発達を規定した要因
小口 高
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1988 年 61 巻 12 号 p. 872-893

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抄録

松本盆地周辺の8流域における,最終氷期末期以降(晩氷期~後氷期)の地形発達について,流域間の相違点に注目して検討した.最初に,晩氷期~後氷期の扇状地発達の違いから,流域を3つに分類した.次に,この時期の気候の温暖・湿潤化によって山地斜面上で形成された「開析斜面」の発達程度の違いから,流域を3つに分類した.2つの分類の間には対応関係があり,このことは開析斜面形成時の侵食によって供給された岩屑が扇状地を形成すると考えられることから合理的に説明される.、統計解析の結果,山地斜面の「起伏・傾斜」「地質」「標高」の各要因が開析斜面の発達速度を独立に規定したことがわかった.これらの要因の差に応じて,各流域における山地斜面の発達が異なり,そのために各流域の扇状地発達に差を生じたと判断される.

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