地理学評論 Ser. A
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岩手県におけるブロイラー産業の発展と産地形成
長坂 政信
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1988 年 61 巻 3 号 p. 239-257

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抄録

岩手県におけるブロイラー産業は1960年代前半に大船渡市で開始され,その後半には県南地域に波及した.その担い手は飼料資本の地元飼料特約店であり,処理加工場を設立しつつ,地元の生産者を確保するために主に委託契約方式を採用してブロイラー飼養を行なわせた. 1960年代後半から70年代前半にかけ,次第に県北地域へとブロイラー産業は地域的に拡大した.その担い手は地元飼料商のほか,総合商社・飼料資本の子会社,単位農協地元農民など多様であった. 1970年代後半には大手のローカル・インテグレーターを中心に,種鶏・ふ卵場の設置,直営農場によるブロイラー飼養,荷受・卸売部門への進出を通して,生産から販売に至る一貫した自己完結型のインテグレーションを形成し,また飼養農家の強い生産意欲にも支えられて市場競争力を強め,南九州産地と並ぶ日本のブロイラー産業の生産地を確立した.
岩手県のブロイラー産業の主産地を形成している南東部地域と北部地域では,零細農家が収益の相対的優位性を最大の要因としてブロイラー飼養を選択し,また,複数のインテグレーターが地域の農業経営や農家経済の状況に対応して,ブロイラー産業への地域的条件整備の役割を果たしてきたという共通の存立基盤のあることが判明した.

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