縄文海進によって形成された古奥東京湾において, 13地点から得られた珪藻化石群集の層位分布の検討により,各地の前浜-海岸線-後浜の環境系列の変=遷を復原し,完新世における海岸線の形態,移動,周囲の環境などの特徴を明らかにした.
海進期 (10,000-6,500年前)には,地形勾配が急であったため,谷の形状に規制された細長く,入り組んだ海岸線がみられた.海進最盛期 (6,500-5,300年前)の海岸線は,現在の海岸線から50km以上奥部の館林~古河付近に達した.海退期(5,300年前~現在)には,湾の浅海化が進んでいたため,前後に広い後浜干潟・前浜干潟を伴う単調な形態を呈する海岸線がみられた.