抄録
糸静線中央部に位置する諏訪盆地の活断層は,変位様式と活動度,分布に基づいてA~Cの3タイプに分類できる.タイプAの断層は盆地の南東端および北西端にみられるもので,大きな左横ずれ成分 (8~10m/kyr) をもつ.タイプBは盆地底と周辺山地の境界部に位置し,盆地側を低下させるもので,約1~3m/kyrの上下変位速度をもつ.タイプCは周辺山地内に位置し盆地側を低下させるもので,いくつかは並行し盆地側への階段断層となっている.平均変位速度は最大でも0.5m/kyr程度である.これらの活断層の分布・分類は,プルアパートベイズンとしての諏訪盆地の形成過程を示すモデルで説明される.諏訪盆地を開口させる主断層にあたるものがタイプA,開口した地殻の盆地側の面(開口壁)にあたるものがタイプB,開口壁の背後の地殻に発達した重力性の正断層がタイプCの断層である.また,古水系や諏訪盆地の形態から,水平圧縮応力により屈曲した主断層(糸静線)が左横ずれし,屈曲部の地殻が徐々に開口していくモデルが諏訪盆地の形成をよく説明できる.諏訪盆地の長辺方向への弘大速度は約8~10m/kyrであり,形成開始期は約120~150万年前と推定される.