抄録
1970年代以降活発な研究の展開をみせていた英米の政治地理学は,近年その再構成が進みつつあり,政治経済学的なアプローチ,国際的スケールの研究の増加が顕著なものとなっている.本稿ではこうした政治地理学の研究動向を, 1. Wallerstein の世界システム論に依拠する P. J. Taylor の研究を中心に展望した.その結果,世界システム論的地理学はグローバルスケール,全体性,歴史的視点の強調などの特徴をもち,これまで別個に行なわれてきたグローバル,国民的,および都市的スケールの研究を統一的に位置づけ,伝統的政治地理学と新しい政治地理学の統一を可能にするとともに,地政学,選挙地理学,地域地理学などにおける新たな研究展開に大きな刺激を与えていることがわかった.