地理学評論 Ser. A
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Schaeferの「例外主義」論文誕生の〓末に関する一考察
杉浦 芳夫
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1991 年 64 巻 5 号 p. 303-326

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抄録

ナチスドイツからの亡命者で社会主義者のF. K. Schaefer は,アイオワ州立大学地理学科の正式教員に採用される過程で研究業績をあげる必要があった.その際演習でとりあげた R. Hartshorne (1939) のドイツ語文献の解釈に疑問をもった Schaefer (1953) は,その点を突いた「例外主義」論文を書くことを決意した.他方,マッカーシズムが吹き荒れる当時,当局による尾行が,かってOSSに関係し,自分との学問観の相違に恨みを抱く Hartshorne の密告によるものとの思い込みが, Schaefer を一層強く論文執筆へ駆り立てた.しかし,「例外車義」論文は,発表後一定期間にわたって引用されることがなかった.これには,学科長のH. H. McCarty が,性格学識学問観において Schaefer を評価しなかったことが関係している.加えて,マッカーシズムの時代的背景が,彼と彼の仕事の評価に不利に作用したといえる.

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