地理学評論 Ser. A
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長野県佐久地方における大学進学行動と大学新規卒業者の就職行動
川田 力
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1993 年 66 巻 1 号 p. 26-41

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抄録

長野県佐久地方において大学進学行動と大学新規卒業者の就職行動を一貫して捉え,大学卒業者を中心とした高等教育水準の地域格差の現状と,その発生メカニズムについて分析した.長野県に立地する大学は,収容力が小さいため,長野県の大学進学者のほとんどが東京大都市圏を中心とした県外へ進学し,その半数以上が大学卒業直後に東京大都市圏内で就職する.長野県において,大学卒業者率の高い地域は,おおむね人口規模の大きく都市化の進展した地:域であり,1970-1980年にかけて長野県の高等教育水準の地域格差は必ずしも縮小傾向にない.長野県佐久地方の高等教育水準は,佐久地方の北部で高く南部で低い傾向がみられる.これは,都市化の進展度や人口増加率と対応しており,1970-1980年間に地域格差は縮小していない.これには就職先企業の質的な差異,および就職機会の多少が大きな役割を果たしている.長野県佐久地方においては高等教育水準の低い地域では大学進学率・大学卒業者のU夕一ン率がともに低く,相対的に大学卒業者率も低くなるといった教育水準の地域格差再生産のメカニズムが働いている.

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