地理学評論 Ser. A
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私鉄路線と幹線鉄道の結節形態の変化からみたわが国における近代交通体系の形成
三木 理史
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1994 年 67 巻 10 号 p. 677-700

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抄録

わが国において鉄道を中心とした近代交通体系の形成は,これまで旅客・貨物輸送数量の変化を指標にして考察され,1906~1907年の鉄道国有化がその契機になったと指摘されてきた.しかし,交通の階層差を問題とせず,また輸送数量に依存してきた既往の見解には再考の余地があるように思われる.そこで,幹線鉄道と私鉄路線の結節形態に視点を置く歴史地理学的手法で,路線の階層差を踏まえた考察を試みた.
その結果, 1906~1907年の鉄道国有化は,上中位路線を組織化して近代交通体系の形成を促;進する機能を果たしたが,完成には至らなかったと判断せざるをえない.主として鉄道国有化以後に建設された下位路線は,1930年代から1940年代前半にかけての交通統制によって近代交通体系への組織化が進行した.したがって,わが国の近代交通体系の形成には,鉄道国有化に加えて交通統制が重要な機能を果たしたと考えられる.

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