地理学評論 Ser. A
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67 巻, 10 号
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  • 三木 理史
    1994 年 67 巻 10 号 p. 677-700
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    わが国において鉄道を中心とした近代交通体系の形成は,これまで旅客・貨物輸送数量の変化を指標にして考察され,1906~1907年の鉄道国有化がその契機になったと指摘されてきた.しかし,交通の階層差を問題とせず,また輸送数量に依存してきた既往の見解には再考の余地があるように思われる.そこで,幹線鉄道と私鉄路線の結節形態に視点を置く歴史地理学的手法で,路線の階層差を踏まえた考察を試みた.
    その結果, 1906~1907年の鉄道国有化は,上中位路線を組織化して近代交通体系の形成を促;進する機能を果たしたが,完成には至らなかったと判断せざるをえない.主として鉄道国有化以後に建設された下位路線は,1930年代から1940年代前半にかけての交通統制によって近代交通体系への組織化が進行した.したがって,わが国の近代交通体系の形成には,鉄道国有化に加えて交通統制が重要な機能を果たしたと考えられる.
  • 堺市百舌鳥梅北町5丁を事例に
    原 真志
    1994 年 67 巻 10 号 p. 701-722
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    都市化した住宅地域で,旧村落時代からの祭り運営が残る大阪府堺市百舌鳥梅北町5丁を対象地域に,自治会加入全世帯についての自治会関連組織に関する行動の分析,および個人単位での社会ネットワーク・社会空間の分析を行ない,地域社会特性と住民の定着の相互関係について考察した.年齢別,性別に分化した自治会関連組織は年齢の両端に位置する子供会・老人会が空間的には限定的であるが幅広い世帯属性を包摂しているのに対し,中間の青年団・秋月会はその逆である.この重層的包摂構造が住民の定着に影響を与えており,早くから社会空間を認知し組織に参加することで自治会全域という地域社会スケールでの定着がうながされる「地域社会型定着過程」と,若い間は組織に参加せず隣組およびその周辺という近隣スケールでの定着がまず進行し,後に社会空間を認知し定着範囲が広がる「近隣型定着過程」という2つの定着過程が生じていると考えられる.
  • 森山 昭雄
    1994 年 67 巻 10 号 p. 723-744
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    西三河平野南部に広がる碧海面とそれを構成する碧海層は,リス氷期からヴュルム氷期前半までのデルタ性の厚い堆積物からなる.本地域は,その時期の海水準変動や古環境の変遷を明らかにしうる日本で数少ないフィールドの1つである.筆者は,碧海層の多数のボーリング資料に基づく解析により,その堆積構造と地下層序を明らかにし,化石ケイソウ群集とFeS、含有量の分析,ESR年代測定を実施し,以下の結論を得た.
    1) 碧海層は,最大70mに達する厚さをもち,下位から基底礫層,下部層,中部層,上部層に分けられる.その下位には,濃尾平野の海部累層に対比される油ケ淵層が存在する.碧海層上部層の海進堆積物から採取された貝化石のESR年代は,8~9万年前の値が得られた. 2) 碧海層基底礫層は,リス氷期の低海面期、(酸素同位体比ステージ6) に堆積した碧海層の基底の砂礫層であり,上流に広がる三好層に対比される.下部層はリス氷期から最終間氷期(5e)に起こった急激な海進期の海成堆積物と考えられ,5eの高海面期に挙母面が形成された。中部層は,5dから5cの海進期に堆積したものである.上部層は5bから5aにかけての海進期に堆積したものであり,碧海面は5aの時期に形成されたと考えられる.
  • 1994 年 67 巻 10 号 p. 745-752
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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