地理学評論 Ser. A
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都市域における風速の鉛直分布とヒートアイランドの立体構造
高橋 日出男福岡 義隆
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1994 年 67 巻 8 号 p. 530-550

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抄録
広島市市街地において夏季晴天日に繋留気球観測を実施し,その資料を用いて都市域における風速鉛直分布とヒートアイランドの立体構造を解析した.
日中海風時における高度50mまでの平均風速プロファイルは,ある高度を境にして上下異なる対数分布で表現される.これに基づいて都市キャノピー層と都市境界層とを区分することができる.両層の界面は市街地中心部付近で最も高くなり,それは建築物高度の70~80%の高度である.進入してきた海風は都市キャノピー層上面で運動量を消費し,都市境界層下部で風速が減じる.このことを通して都市域では風速分布の再調節がなされていると考えられる.
市街地上空には日中に上方へ延びる高温域が形成される.このような都市境界層下部のヒートアイランド(ヒートドーム)は,日射を受けて加熱されている屋上面を主たる熱源とし,海風が都市域を通過する際に大きな地表面粗度によって生じた空気の鉛直混合が熱を上空に運ぶことによって形成されると考えられる.また,都市境界層下部と都市キャノピー層とではヒートアイランド強度の時間変化に差異があり,それぞれ異なる高温化の要因に支配されていることが示唆される.
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