地理学評論 Ser. A
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地上気温変動の季節性に着目した都市気候成分の解析
朴(小野) 恵淑安成 哲三沖 理子尾田 敏範
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1994 年 67 巻 8 号 p. 561-574

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抄録

一地点の気温の平年偏差の季節変化パターンの主成分分析を行なうことにより,都市気候成分(都市化に伴う気温変化量)を取り出す試みを日本の42地点について行ない,非常によい結果を得た.第1主成分から第4主成分までで全体の変動の90%以上を説明でき,第1主成分の寄与率は50%を超えている.
第1主成分の固有ベクトル分布(季節パターン)とスコア(時間係数)をみると,ほとんどの地点において「季節パターン」は冬季の振幅が他の季節に比べて卓越し,スコアは1900年代の初めからほぼ一方的な増加傾向を示している.第1主成分は1年を通じて気温が年々上昇する傾向を示し,その傾向はとくに冬季に強いという気温の変動モードが非常に卓越していることから,都市気候成分を表わすモードとして捉える.
第1主成分による年平均気温偏差の平均的な線形増加率aと都市人口との関係を日本の諸都市において調べた結果,両者の間にはかなりよい正の線形関係があることがわかった.すなわち,都市の規模が大きいほ.ど都市気候による気温の増加率が大きいことが示唆された.しかし,年平均気温偏差の線形増加率aと都市人口との関係は人口約30万程度を境にして大きく異なる.入ロ約30万以下の中・小都市では,両者の間にほとんど相関関係がみられないが,人口30万以上の大都市では非常によい正の相関関係(R2=0.655;有意水準99%)がみられる.
人口約30万以下の中・小都市での線形増加率aの値は,人口に関係なく0.5~1.0°C/100年の間に分布し, 30万以上の大都市での線形増加率aの値は,人口に対応して1.0~3.0°C/100年の間に分布している(東京, 2.7°C/100年;京都, 2.4;福岡, 2.2;札幌, 2.0など).これらの結果は,これまでの日本の都市気候の研究と非常によい一致を示している.

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