地理学評論 Ser. A
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カリフォルニア州ターラック地域における日本人移民の植民活動と移民社会
矢ヶ崎 典隆
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1996 年 69 巻 8 号 p. 670-692

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抄録
カリフォルニアのサンホアキンバレー北部に位置する夕一ラック地域を対象として, 1907年から1920年代末までの期間について,日本人移民の植民活動と移民社会の動向を復元・検討した.近隣のヤマトやコーテズの日系計画植民地とは異なり,ここでは日本人は個別的に入植し,分散的な日系農場によって構成される移民社会が形成された。農業経営の中心は,現金借地によるキャンタロープメロン栽培であった.市街地には小規模自営業を営む日本人も現れた.また,メロン収穫期には日本人労働者が流入して,この地域の農業を支えた.経済・社会・文化的な活動を目的としてさまざまな日系組織が設立されたが,それらはどくに農地の借地やコミュニティ生活において重要であった.ターラック地域に見られた日本人の植民活動や移民社会は,排日運動が激化し,制度的・非制度的な差別が行われたホスト社会のなかで,日本人移民が採用した適応戦略の一っの形態を示すものであった.
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