熱帯の大気循環場の変動がアジア地域の降水量変動に与える影響を明らかにするために,インドから東アジアを含む夏季降水量とインド洋から太平洋の海面気圧とを使用して統計解析を行った.夏季降水量と海面気圧相互の時空間変動を同時に議論するために特異値分解解析を行い,これらの空間パターンと年々変動の特徴を記述した.第1モードはエルニーニョに関連したモードとして特徴づけられ,インドおよび華北域の降水量変動と熱帯域の東西循環の変動を示す.このモードの降水量および海面気圧の時間変動にはそれぞれ10年規模の時間スケールを持つ変動が含まれている.第2モードは,東アジアの華中を中心とした降水量変動と西部熱帯北太平洋域の海面気圧変動を示す.この海面気圧変動は,同領域の対流活動の変動との関連が強い.
