抄録
都市内部における環境の差異が災害にどのように反映するかという視点から,本研究は阪神・淡路大震災における神戸市上沢駅周辺地区(兵庫区・長田区)を事例として居住環境に密接な土地・建物の所有形態の違いと建物被害の差異を検討し,その関連性を考察した.老朽狭小家屋を中心に大きな被害がみられたが,さらに持家より借家の全壊率が高く,所有形態による被害格差が生じていた.もともとこの地域では第二次世界大戦前に借家の長屋として建てられたものが,戦後になり土地・家屋の所有権細分化が進み,借家の持家化が高まった.ある程度の規模のある家屋は,建替えが進んだが,狭小な家屋はその広さと接道問題に加え,混在する複雑な所有形態が影響して更新されずに今日まで存続してきた.また現在では持家の家屋でも,借家の時から居住している居住期間の長い住民の多くが高齢化していることは,老朽家屋の更新を遅らせ,被害の拡大に関係している.