1995年1月17日未明に発生した兵庫県南部地震により,六甲山地の3カ所の尾根,すなわち摩耶山南西の学校林道と呼ばれる尾根,有馬温泉南の湯槽谷山付近の尾根ならびに六甲ケーブル山頂駅南東の寒天山道と呼ばれる尾根において,尾根を横切る地割れ系が形成された.本研究では,これら3カ所の地割れ系の性質を詳述するとともに,その形成プロセスを地盤に作用した水平加速度の推定と併せて吟味することを目的とした.ここで地震により地盤に生じた水平加速度の大きさと方向は,巨礫および墓石・献灯の中座の変位から推定した.
これら3カ所の地割れ系は直線性のみならず,雁行状の配列を示しながら尾根を斜めに横切り,一部は尾根のほか地震によって形成された崩壊地の滑落崖を斜めに切っていることなどの性質を有すること,ならびに周辺に存在する巨礫などから求めた地盤に作用した推定水平加速度の大きさと方向の分布特性の吟味などから,問題とした地割れ系は地震によって発生した斜面崩壊に伴うものではなく,テクトニックなものと推定した.
さらに,各調査地点周辺の推定水平加速度の大きさと方向のほか,地震による崩壊地の方位ならびに道路側溝などのオフセットの方向から判断し,地割れ系の形成プロセスに関する二つのモデルを提案した.それらは,水平加速度の作用した方向は同じであるが,その大きさが異なることによって地割れ系が形成されるタイプ(学校林道型)と,ある線を境にして水平加速度の作用した方向そのものが異なることによって地割れ系が形成されるタイプ(有馬・湯槽谷山型)である.
抄録全体を表示