地理学評論 Ser. A
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大都市郊外地域における高齢者転入移動の特性
埼玉県所沢市の事例
平井 誠
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1999 年 72 巻 5 号 p. 289-309

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抄録

大都市郊外地域における高齢者の転入移動の特性を明らかにするために,本稿は東京の郊外地域に位置する埼玉県所沢市への高齢者転入移動を移動者個人のレベルから分析し,移動の類型および移動の要因について考察を行つた.アンケート調査および聞取り調査によって得られた112件の高齢者転入移動の事例を検討した結果,以下の点が明らかとなった.高齢者転入移動を随伴移動者別に検討すると,移動者の属性,移動理由,移動パターンに差異が認められた。また,高齢者が主体的に行う「同居志向型」,「近居志向型」および子供世帯に随伴して行う「随伴型」という三つの移動の類型が見出だされた.「同居志向型」は70歳以上の女性に顕著であり,単独で子供世帯の下へ移動する.「近居志向型」は60歳代の比較的若い時期に夫婦で子供世帯の居住地の近隣に移動していた.三つの類型とも,とくに移動先の決定に際して子供世帯の影響を強く受けていた.親である高齢者とその子供の関係が,大都市郊外地域への高齢者転入移動と密接に関係していると結論される.

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