本稿では,広島県の東広島老人保健福祉圏域を事例として,中小規模の自治体における施設整備の進展に伴って生じた高齢者福祉サービスの供給と利用に関する地域的枠組みの変化について,自治体間の依存関係に注目して検討した.人口規模の小さい圏域北部の3町は施設整備に共同で補助をしたが,措置制魔や補助金体系などの制約からデイサービス施設の利用は不活発であり,地域的枠組みは需給動向の変化に対して硬直的である.一方で,特別養護老人ホームの利用は,圏域内の通勤流動と近似した入所動向を示すとともに,北部3町が圏域中心都市への依存性を低下させたことが分かった.さらに,新たな施設整備に伴い,各市町村で需要が充足される傾向が従来よりも強まった結果,圏域外からの入所は減少し,特別養護老人ホームの地域的枠組みは全体として狭域化していることが明らかとなった.しかし,施設整備の効果は市町村の需要規模によって異なることも示唆された.