地理学評論 Ser. A
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昭和初期の東京とその周辺地域における中国人労働者の排除と集住地区の衰退
阿部 康久
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2000 年 73 巻 9 号 p. 694-714

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抄録
昭和初期の東京とその周辺地域を対象として,中国人労働者の集住地区が衰退していった過程を,政府や地方自治体の外国人政策の変化や,、都市労働市場の状況との関係から検討した.1920年代前半に日本へ来住した中国人労働者の就業構造は,昭和恐慌の発生によって一変した.1930年には中国人建設・運搬労働者の半数近くが失業するほどになり,彼らに対する排斥運動も深刻化しっっあった.そのため,この年には,失業者を中心に帰国希望者が相次ぎ,日本政府の斡旋により中国人労働者の大量帰国が実施された.1920年代後半期には,政府による中国人に対する強制送還も厳格化された.まず,1926年末頃から,窃盗などの検挙者を中心に送還者数が増大した.1929年頃からは主な送還対象者が不正入国者や無許可労働者に拡大され,1930年には送還者数が最大になった.これらの政府の諸政策によって,隅田川・荒川沿いの地域などに居住していた中国人労働者は帰国を余儀なくされ,彼らの集住地区は衰退していった.
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