Geographical review of Japan, Series B
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南関東における完新世海成段丘の変位
熊木 洋太
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1985 年 58 巻 1 号 p. 49-60

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抄録

南関東の沿岸域の完新世後期における地殻変動を明らかにするため,房総半島南部,三浦半島,大磯-国府津地域の完新世海成段丘の分布,形成年代,高度などを調査した。
明瞭な完新世海成段丘は,房総半島南部では4段(沼I~沼IV),三浦半島では3段(野比I~野比III),大磯-国府津地域では3段(中村原,前川,押切)に区分することができる。従来よく知られていなかった三浦半島の完新世段丘(野比I~野比III)の形成年代は,約6000年前,4600年前,3100年前であり,沼I~沼III面にほぼ対比できるものと思われる。しかし,沼IV面に対比される段丘面が三浦半島や大磯-国府津地域に見られないことは,段丘面の離水が南関東において一斉に行われているとは限らないことを示している。
完新世最高海面期(約6000年前)に形成された完新世最高位海成段丘面(沼I面,野比I面,中村原面)の高度分布は,内陸への傾動に西北西-東南東方向の軸を持つ波曲が重なっていることを示している。この高度分布は,元禄型,大正型の地震隆起だけでは説明できない。
完新世段面は,三浦半島の活断層および国府津-松田断層により変位しており,これらの断層が完新世後半においても活動していることを示している。
完新世最高位段丘形成後の平均隆起速度は,更新世後期以降の平均隆起速度より大きいので,更新世後期に比べて完新世の地殻変動はより活発であると思われる。

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