地理学評論
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過疎山村における高齢者の生活維持メカニズム
島根県石見町を事例として
中條 曉仁
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2003 年 76 巻 13 号 p. 979-1000

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抄録

本稿は,過疎山村における高齢者の生活維持メカニズムを,高齢人口の残留傾向が顕著な島根県石見町を事例として検討した.分析には「戦略」概念の枠組を導入し,高齢者が生活を維持するための「適応戦略」の展開メカニズムに注目した.過疎山村で多数を占める子どもと別居する高齢者を対象に,彼らが他者と形成する社会関係を適応戦略の「資源」とし,高齢者を取りまく他者(別居子・近隣者・友人)を資源の源泉として位置付けた.適応戦略の展開は,高齢前期において自ら他者を取り込んで資源を調達する傾向にあるが,高齢後期に至ると他者が資源調達を支援しており,その主体性に変化が生じている.そこには高齢者と他者との空間関係が作用しており,近隣者は加齢に対して最も社会関係の安定した他者となっている.これは同時に高齢者による適応戦略の展開に,加齢に伴う限界が生じていることを示すものである.過疎山村における高齢者の生活維持は,高齢者をめぐる他者の関係性が加齢に伴い,その構築主体を含め柔軟に変化することで成立しているものと考えられる.

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