地理学評論
Online ISSN : 2185-1727
Print ISSN : 1347-9555
ISSN-L : 1347-9555
スギ花粉症のリスク削減を意図したスギ人工林整備の空間的経済評価
山口県市町村データを利用した距離帯別仮想市場による分析
村中 亮夫
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 77 巻 13 号 p. 903-923

詳細
抄録

本稿では,面的に偏在する空間財を評価する仮想市場評価法 (CVM) として,支払意思額 (WTP) を距離帯別仮想市場から推定する方法論を提示した.この手法を用いて,スギ花粉飛散量の減少による健康リスクの削減を意図した,スギ人工林整備の便益を評価した.その結果,便益に対するWTPは,世帯年収の影響を受けていることがわかった.そして,所得変数による便益移転評価モデルを用いて便益移転を行うと,山口県におけるスギ人工林整備事業(2002~2011年度)の便益は,山口県民にとって約144億円(現在価値化)の効果が期待できると推定された.このスギ人工林単位面積当たり便益は,スギ人工林密度の低い地域,世帯密度の高い地域で高くなる.また,便益の値は,スギ人工林密度の高い地域の中でも,世帯密度の高い山陽側で高いことがわかった.この推定便益は県林業費の約2割を占めている.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
次の記事
feedback
Top