地理学評論
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浅間火山を起源とする泥流堆積物とその関東平野北西部の地形発達に与えた影響
吉田 英嗣
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2004 年 77 巻 8 号 p. 544-562

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抄録

第四紀の成層火山を持っ流域の地形発達には,大規模山体崩壊など,火山特有の侵食過程に伴う土砂供給が関与し得る.本稿ではその一例として前橋・高崎地域の地形発達を検討した.24ka頃,利根川が形成する扇状地面上に前橋泥流堆積物が堆積した結果,泥流堆積域で地表が緩傾斜化し,河床高度が増した.利根川は泥流堆積面を侵食し,16ka以降,河道を定めて広瀬面を形成した.前橋泥流堆積面である前橋面上には,前橋泥炭層が広範に形成された.11ka頃,前橋泥流堆積面を侵食していた烏川の谷を含む高崎地域に,井野川泥流堆積物が流下し,鳥川は河道を現在の位置に変えた.この烏川は井野川泥流堆積面(高崎面)を下刻し,高崎面が離水した.さらに,高崎面東部で井野川泥流堆積物を刻む水系が,侵食面の井野面を形成した.両泥流の堆積は,本地域における複数回の大規模な河道変遷を招き,ひいては地形発達を長期的に規定してきた.

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