地理学評論
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1990年代の長野市における公共交通ネットワークの変化
百瀬 裕水
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2005 年 78 巻 2 号 p. 69-86

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抄録

本研究は,長野市を対象地域に,地方都市内における公共交通ネットワークの変化とそれに対する行政や公共交通事業者の意思決定を空間的視点から解明することを目的として,従来計量的分析と歴史的記述という別々の視点から行われてきた公共交通に関する地理学的研究を組み合わせることで,空間的分析と時間的流れの両者を取り入れた,公共交通ネットワークにおける時空間構造の解明を図った.分析は鉄道・バスの運行本数を基に因子分析を行い,結節構造の変化を明らかにした.その結果,結節構造に関しては,鉄道やバス路線が集中する地区を除き全体的には1990~2000年までの10年間に地区間連結の縮小による単純化がみられた.また,交通利便性においては,結節構造同様,周辺部の低下により市中心部と周辺部との格差が拡大したが,これは市街地周辺の一部で把握できるオリンピック施設や新幹線の整備による影響もあると考えられる.これに対して,行政側は公共交通空白地帯の解消を図るべく対策を進めているが,現在では都市中心部における市民の移動機会確保を優先している状況にある.一方,交通事業者は乗車人員の増加があまり見込まれない中で,鉄道会社が利用者の多い一部区間で輸送力の強化や接続する交通手段との連携輸送に重点を置いている.また,バス会社は全般的に運行本数の減少や路線の統廃合を進行させているが,その一方で需要が高い既存路線の維持に努めている.

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