地理学評論
Online ISSN : 2185-1727
Print ISSN : 1347-9555
ISSN-L : 1347-9555
スリランカにおける有機農業の展開とそのメカニズム
河本 大地
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 79 巻 7 号 p. 373-397

詳細
抄録

グローバルなフードシステム化が進む現状を踏まえ,途上国における有機農業の展開とそのメカニズムを,スリランカを対象に研究した.その際,特に関連アクターの行動と相互関係に着目して分析した.スリランカの有機農業は,アグリビジネスが先進工業国に有機農産物を輸出することによって実質的な展開をみている.そこには,プランテーション栽培企業と,小農グループを組織する企業という二つのタイプが見出された.他方, NGOも有機農業の推進を行っているが,この場合は輸出よりも農村開発や環境保全に力点を置く.活動の活発なNGOは国際機関などとも密接な関係を持っている.このように,スリランカにおける有機農業の展開は,先進工業国との強い関係性を持ちながら進んでいるが,そこには一方的な従属ではなく,内発性や関係アクター間の連携が一定程度存在することが確認された.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top