2008 年 81 巻 2 号 p. 60-75
本稿では, 地方交付税削減策の実態を詳細に検討した上で, 利害関係者の動きに注目しながら, 市町村合併政策との関係の中で小人口町村を対象とした地方交付税削減策が強く推進されたことに対する解釈を試みた. 分析の結果, (1) 地方交付税削減策と小人口町村の財政状況の悪化, 財政担当者の自町村の財政状況に関する認識の変化は時期的に明瞭に連動している, (2) 近年の小人口町村に対する基準財政需要額算定額に関する定量分析の結果, 2001年度という新たな転換点が検出された. この年度を境として, 重み付き回帰モデルの各パラメータの数値は, 増加から減少に転じ, 小人口町村の経常収支比率も急上昇する, (3) 構造改革を掲げた小泉政権の発足を契機として, 2001年度以降, 総務省は地方交付税制度の骨格を守るために小人口町村をスケープゴート的に扱うようになった, という3点が明らかになった.