本研究は, 東京都足立区北東部を事例として, GIS上で25,359棟の建物に対し, 商業施設の一つであるコンビニエンスストア (以下, コンビニと略称) への最短道路距離を求め, 建物レベルの近接性を測定した. 建物レベルの近接性の分布を詳細に検討したところ, 近接性は道路網のパターン, 施設と道路網の位置関係, 建物と道路網の位置関係, 施設同士の位置関係, などによって規定されていた. 次に, 建物レベルの近接性と, 町丁目中心点からみた町丁目レベルの近接性を比較したところ, 町丁目レベルでは, 施設への平均距離が若干長いことから, 全体的にみると近接性は多少悪くなった. 最寄りのコンビニは, 町丁目の境界を成す主要道路沿いかその外側に8割立地していることから, 町丁目中心点に比べて, 主要道路沿いにも分布する建物の方が, コンビニへの近接性は良くなると考えられる. したがって, 近接性を測定する場合, 地域単位の中心点と建物とのコンビニに対する位置関係の差が, 生態学的誤謬をもたらす原因となっていることが明らかとなった. 最後に, 町丁目内における建物レベルの近接性の差異を分析したところ, 近接性が“良い”町丁目内では内部の差異は小さかった. それに対し, 近接性が“普通”の町丁目内では差異が大きくなる傾向がみられることから, 町丁目の中心点で近接性を代表させることの限界が明らかになった.
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