宝石学会(日本)講演会要旨
平成19年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
セッションID: 8
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合成ダイヤモンド鑑別の現状―GAAJラボにおける実例―
*北脇 裕士阿依 アヒマディ
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抄録

1990年代に入って、高温高圧法による合成ダイヤモンドが宝石市場に流通するようになった。これらのほとんどは2ct以下の黄色のIbタイプであるが、一部はHPHT処理によりIaタイプの緑黄色にされている。また、少量ではあるがIIaタイプのカラレス、IIbタイプのブルーも存在する。最近では照射と熱処理によりピンク~レッドもしくはパープルにされたものもある。
従来、宝石用に合成されるダイヤモンドは主にロシアの技術を用いたものであったが、近年はアメリカのGemesis社がロシアの技術を独自に改良した方法でイエロー・ダイヤモンドを量産しており、Chatham社はロシアと異なった技術で製造されたピンク、ブルー、イエロー等を販売している。また、合成ダイヤモンドに付加価値を期待した新たな販売戦略が現れ、遺灰や髪の毛からの合成を謳った販売者が複数存在している。
さらに最近ではメレサイズの合成イエロー・ダイヤモンドが加工された宝飾品に混入しており、鑑別を煩わせている。
高温高圧法による合成ダイヤモンドは金属溶媒を用いることから、天然とは異なった晶癖を有している。また、溶媒金属を内包物として含有することがあり、天然との識別の根拠となる。
一般鑑別においては、内包物、紫外線蛍光、カラー・ゾーニング、歪み複屈折の観察が重要である。
ラボラトリーの技術においては以下の手法が有効である。
_丸1_FTIRによる分光分析
窒素の含有量と存在の仕方を知るのが鑑別上重要な指針となる。GAAJラボではすべてのグレーディング対象石の赤外分光を測定している。特別に設計されたサンプル台上でのモニター測定で1石あたり数秒の短時間で検査を行うことが可能である。また、セッティングされたメレダイヤモンドであっても赤外顕微鏡にて正確に分析を行うことができる。
_丸2_紫外-可視領域分光分析
合成イエローにはしばしば天然には見られないNi-N関連の吸収が認められることがある。
_丸3_EDXRFによる元素分析
Fe、Ni、Coなどの金属フラックスを検出できることがある。GAAJラボではモニターで分析位置を確認し、0.05mmの局所分析を行うことができる。
_丸4_カソード・ルミネセンス法(CL)による観察
CL法は結晶成長履歴の相違から天然と合成の識別に極めて有効である。DTC製のダイヤモンド・ビューは操作性に優れているが、蛍光像のイメージはCL法が優れている。天然ダイヤモンドのCL像には種々のものがあり、個体識別にさえ応用できる。合成ダイヤモンドはセクター・ゾーニングが明瞭で、熟練したオペレーターにとっては結晶原石の形態が容易に想像できる。
_丸5_フォト・ルミネセンス(PL)分析
PL分析においてある種の金属フラックスや天然特有の蛍光ピークを捉えることができる。

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