宝石学会(日本)講演会要旨
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2019年度 宝石学会(日本) 特別講演要旨
  • 若槻 雅男
    p. 1-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    【高圧合成の日の出】

    我が国におけるダイヤモンド高圧合成の日の出は、圧倒的に先進した外国企業が完全に近い特許網を整備した上で合成法を開示したこと、また一方では戦後の疲弊からの産業復興が軌道に乗り、いくつもの企業の中に新規で独創性に富み自企業独自の技術開発への強い志向が生まれていた時代という、二つの要素で特徴づけられよう。かの GE が信頼性ある高圧合成の技術を実現したと、Nature を介し世界に向けて公表した 1955 年は、世界における「確かな人工合成」の幕開けといえよう。しかし具体的な方法はさらに 4 年間も伏せられ 1959 年に到って高圧高温装置や黒鉛からの変換プロセスが特許ならびに学術論文として同時に開示された。この間に世間の関心が一挙に高まり、野田稲吉先生をはじめ炭素、セラミック分野の大御所の先生方はその方法や可能性の検討を種々の観点からなさっておられたようである。

    【GE の特許網の下で】

    装置、触媒、プロセスにわたり、考え尽くして掛けられた特許網が作られてしまった後では、工業化を試みるには越え難く、回避し難い壁や困難を伴う日の出であった。世界的にも早くからダイヤモンドの工業生産を実現した小松ダイヤモンドの成功においても、独自の着想が先願特許網の壁を回避するにはかなりの苦労があったことと思われる。

    【許された自由な発想と掘り下げた開発活動】

    1955 年当時筆者は大学教養課程の 2 年生であった。1958 年に東芝に就職した頃、我が国の産業は経済復興と更なる技術発展の時期にあり、いくつもの企業が新規技術、独自技術の研究開発を極めて意欲的に志向し、非常に深く掘り下げた段階から技術開発を行うことも稀ではないという状況が到来していた。

    そこにちょうど居合わせた運命により、筆者は高圧高温装置技術とダイヤモンド高圧合成技術の研究開発を、まさに「日の出」から明けきるころまで自らどっぷりと漬かって経験させてもらう機会にめぐり合った。

    前述のように自由な発想の許される中で多くのチャレンジができ、掘り下げた段階から、チームを組んでの精力的な実証試験まで一貫した研究開発に携わる幸運(?)に巡り合った。

    【東芝グループの場合】

    筆者らは、設立直後の中央研究所で最初に、GE の特許でクレームされた下限圧以下の圧力でも合成できる可能性を探索した[1]。次いで東芝タンガロイ(当時名)と共に検討組織が結成され、その中で筆者自身は GE 特許の範囲外に有効な触媒はあり得ないのか、新触媒の探索にシフトした。

    触媒とプロセスに関する最初の着眼点は、GE 特許に、単体として黒鉛からダイヤモンドを生成させる元素として、Ta が記載されているのに Nb(周期律表の同族)が記載されていなかった点である。そして限られた条件下で僅かながらも再現性をもって生成することを見出したことが突破口となった。また Cu(Ni の次に位置する元素)が、もうちょっとで触媒になる、とても惜しい地位を持っていることを調査と実験によって確信した。これらをベースに以後の探索計画を展開し、研究者としては大変幸運なことに、GE の特許網で権利主張された 9 個の「触媒元素」を全く含まない新触媒を系統的に見出すことができた[2,3]。触媒のほかにも、特許係争を避ける想定で「ベルト型」を避け、優れた機械精度とその再現性を確保し、ルーチンワークとしての使い勝手を追求した六方押しタイプの高圧高温装置も実現した[4,5]。

    新触媒の原型は少し高い条件で十分な量のダイヤモンドを生成させるが晶質に問題があり、Al の添加が改善の糸口となった。さらにチームの中で構成主成分と共に添加元素も周到に探索・調整された結果、微妙な P-T 制御によらずとも無色透明の大粒粒子がより容易に得られる工程も実現された。当時としては世界最大級の六方押し合成装置を設置し、実証試験が精力的に進められた。ただ一つ、Ni ベースの合金触媒(洗練された GE 型触媒)よりも数千気圧の高圧を要することが課題として残っていた。

    また合成条件によっては、立方体を基調とする外形(~2mm)と灰白色の色調が天然産多結晶体に酷似する粒子も生成した。PCD の普及していなかった当時、加工刃先材として天然多結晶体が好まれていた背景から、その応用を検討しようとしたこともあっが、粒子のキャラクタリゼーションも生成機序も未完結である。

    開発が進むとともに追いかける相手も先へ進み人工品のバラエティも拡大した。結果としては、これらの活動がグループの社業に明確に貢献できたわけではなく、現代の投資の論理に照らせば稚拙な開発活動であったが、日の出頃の情勢、ハイリスクながらも独自性を志向した開発活動など、いくつかの観点で紹介し、諸賢の興味・関心に応えることができれば幸甚である。

  • 加茂 睦和
    p. 3-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    気相合成ダイヤモンドは、開発された当初は画期的と注目を浴びたがその用途の広がりは、開発されて 40 年が経とうとしているが目だったものが見られない。ところが最近 Lab Grown Diamond として宝飾用に注目を集めるようになってきた。開発時には思いもしなかった用途である。ここでは無機材質研究所(現物質・材料研究機構)での初期の気相合成ダイヤモンド研究を中心に報告する。

    1.無機材質研究所でのダイヤモンド研究の経緯

    気相合成ダイヤモンド研究は 1974 年ダイヤモンド研究グループの発足とともに始まった。研究課題は、高温高圧法による単結晶合成と、衝撃圧縮法による合成、および気相からの合成であった。主となった課題はそれまでにダイヤモンド合成の成果を上げていた高温高圧法による単結晶合成で、衝撃圧縮法による合成や気相合成法は、どちらかというと探索的課題であった。

    当時ダイヤモンドの気相合成の試みについては、ソ連と米国から報告されていた。ソ連のグループはダイヤモンド単結晶を基板とし、炭化水素の熱分解によって、針状や球状の析出物を得ていた。

    一方米国では、Eversole と、その影響を受けダイヤモンドの気相合成研究を進めた Angus らによる基礎的な実験が行われていた。

    気相法の提案はこのような研究の文献調査を行った上で行われていたが、必ずしも十分な成算があったものではなかった。著者も気相法メンバーの一人として参加したけれども、初期はどちらかというとダイヤモンド表面の反応性を調べることを中心に取り組んだ。

    気相合成に関する初期の成果は炭素の同位体 13C を反応ガスとして使った実験である。これは我々が気相からのダイヤモンド析出の可能性を示した最初のデータである。

    2.気相合成法の開発

    このデータをもとに 1980 年にはダイヤモンド気相合成装置を設計試作し、本格的に気相合成に取り組むことになった。1981 年 B.Spitsyn らのダイヤモンド気相合成の結果が報告された。その中にあった原子状水素の記述に気相合成に関わっていた一人が注目し、水素を 2000℃以上に加熱することで原子状水素を発生させる、熱フィラメント法によるダイヤモンド合成に成功した。原子状水素の発生法としては、手っ取り早く既存のそれまでの装置を改造し、タングステンフィラメントを使ったものだった。この成果は, 産業界はもちろん、マスコミからも高い注目を集め、しばらくの間研究室への国内外からの来客が絶えなかった。気相法を研究していたけど遅れを取ったので、首になる前に一度装置を見せてほしいという人、新しい合成法で作られたダイヤモンドは装飾用としてどうなるのでしょうかと聞く宝石店など多様だった。

    しかし我々の気相からのダイヤモンド合成の成功は、すんなりと学会に受け入れられたわけではなかった。1982 年春の学会では、無機材研が合成したといっているダイヤモンドはダイヤモンドではないという発言をした人がいたほどだった。

    マイクロ波プラズマ法は、今ではダイヤモンド気相合成法の主流となっているが、はじめは暗中模索状態だった。高周波を用いた方法では既にダイヤモンド合成が試みられており、新規性がないと言うことでマイクロ波を用いることとした。ところがグループの誰もマイクロ波の発振器をどこで扱っているか知らず、発振器探しにまず一苦労し、やっと製造元を見つけ、年度末に残っていた研究費を集めて急拠整備した。前年度に整備していたダイヤモンド気相合成装置を改造してマイクロ波キャビティーを取り付け、試行錯誤をしながらプラズマの発生と位置の調整を行い、1982 年 5 月中旬にダイヤモンドの合成に成功した。

    無機材研では、このように熱フィラメント法に引き続き、1982 年にはマイクロ波プラズマ法、高周波プラズマ法によってダイヤモンドの合成に成功した。このように異なる方法で合成に成功したことで、無機材研のダイヤモンド合成の信頼度は高まっていった

    3.気相合成ダイヤモンドの現状

    開発当初こそ製品化に取り組む企業が数多く見られたが目立った成果が上がらず、ほとんどの企業が撤退していった。

    ところが最近宝飾用として注目を集めるようになってきた。それは合成技術の向上によるところが大きい。一つは合成装置の大型化であり、もう一つは合成速度の高速化と高品質化である。宝飾用として可能な品質のダイヤモンドが相応な価格で市場に提供できるようになってきた。開発者の一人として当初期待していた分野ではないが、開発して 40 年近くなりやっとこの技術が日の目を見るように感じられ嬉しい限りである。

2019年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
  • 北脇 裕士, 江森 健太郎, 久永 美生, 山本 正博
    p. 5
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    宝飾用の HPHT 合成ダイヤモンドは、1990 年代からロシアで商業生産が始まり、その技術が米国、インドにも広がっていった。宝飾用の CVD 合成ダイヤモンドは、2003 年に Apollo DiamondCo. Ltd. がはじめて販売を公表し、その後米国を中心に発展してきた。

    近年、宝飾用合成ダイヤモンドの製造拠点は、中国、シンガポール、インドなどアジア地域に集中しており、色、サイズ、品質など多彩な製品が生み出されている。

    本報告では、2016 年~2019 年にかけて訪問したおよそ 10 ヶ所の中国およびインドの主要な生産者とその製品について紹介する。

    ・中国の HPHT 合成

    中国の鄭州は、工業用ダイヤモンドの世界的な生産地で、世界の需要の 95%を担っているといわれている。数多くのダイヤモンド生産会社があるが、ZhongNan Diamond Co., Ltd. 、Huanghe Whirl Wind Co., Ltd. 、Zhengzhou Sino Crystal Co., Ltd. は、「3 大巨頭」と称され、他を圧倒している。

    鄭州では、2014 年末頃から宝飾用メレサイズの無色合成ダイヤモンドの生産が開始され、その圧倒的な生産量により、瞬く間に世界の宝飾市場を席巻した。2018 年以降、0.2ct~0.5ct のカット石が中心に生産されているが、1ct~2ct サイズのものも作られている。

    ・中国の CVD 合成

    2013 年初頭に CVD 単結晶製造技術が、Ningbo Institute of Materials Technology & Engineering Chinese Academy of Sciences で開発され、Ningbo Crysdiam Industrial Technology 社が設立された。ここでは最大 2ct の無色とピンク色の宝飾用 CVD 合成ダイヤモンドが生産されている。上海の ZS Technology 社は、Zhangjiang ハイテクゾーンに 2014 年 12 月に設立された会社である。1ct~最大 5ct の高品質の無色ダイヤモンドを生産している。

    ・インドの CVD 合成

    インドのスーラットはダイヤモンドのカット・研磨が盛んな都市として知られている。この地において 2011-12 年頃から宝飾用 CVD 合成ダイヤモンドの製造が始まった。New Diamond Era 社、Diamond Nation 社などの大手の他、Diamond Elements 社、Unique Lab Grown Diamond 社など中小が 10 社程度である。

    単独では、シンガポールに拠点を置くⅡ a Technologies が最大規模と思われるが、国別ではインドが宝飾用 CVD 合成ダイヤモンドの最大の生産国と思われる。

  • 林 政彦, 林 富士子, 安井 万奈, 山﨑 淳司
    p. 6
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    すでに高温高圧法による合成ダイヤモンドは時折ミネラルマーケット等で見られることがあったが,コレクターや研究用標本に使われる程度で高価であり流通量も多くはなかった.ところが,ここ数年で合成ダイヤモンドが展示会などでも見られるようになった.しかも,ガイ一万円程度の価格である.

    今回報告する合成ダイヤモンドは,0.1ct 程度で数千円にて売られていた(Fig.1).購入した商店によると, 中国製で研磨はインドで行われているとの事である.インクルージョンが多く見られ(Fig.2),HPHT で製造されたと見られるもののインクルージョンは,微小領域 X 線回折測定で,金属 Co や Fe2N と同定できた(Fig.3).

    これらの合成ダイヤモンドは,キュービックジルコニアや合成モアッサナイトなどの模造石と違い天然ダイヤモンドと同じ炭素元素物質なので,間違えられて取引されることが懸念される.また,合成ダイヤモンドを「ラボグロウン」のような名称を使って販売している例も見られる.

    今後,インクルージョンが少なくて品質がよいものについては,天然か合成ダイヤモンドかを表示して流通されることを望む.

  • 小川 日出丸
    p. 7
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    光学欠陥や不純物によってダイヤモンドは特徴的な蛍光を発する。蛍光を活用した検査には、紫外線に対する蛍光を目視で観察する方法や、DiamondView™による蛍光像解析、光学機器による測定をおこなうなど、宝石鑑別において重要な項目である。

    天然ピンクダイヤモンドと合成ピンクダイヤモンドは、それぞれ特徴ある蛍光がみられる。その蛍光がどのような波長分布によるものなのか、蛍光分光光度計で測定した。最大の蛍光スペクトルをもたたらす励起波長や、励起波長の変動にともなう蛍光スペクトルの変化を、3D 蛍光スペクトルを測定することによって、それぞれの特徴を観察した。天然ピンクダイヤモンドは、赤外分光を使用してタイプをしらべるとⅠ a、Ⅰ aA、Ⅰ aA>Ⅰ aB、Ⅰ aB>Ⅰ aA、Ⅰ aB、Ⅱ a が存在する(Sally et al. 2018)。個々の蛍光強度に違いはあるが主に青色蛍光を示す。いくつかのタイプについて蛍光スペクトルを測定した。

    合成ピンク石は、赤~橙色の蛍光が一般的である。これは合成後に、照射と加熱処理によるNVセンタによって赤色系に着色されていることによる。(一部淡色は除く)。

    産業界では次世代パワーデバイスとして合成ダイヤモンドが注目されているが、NV センタの赤色蛍光を利用したダイヤモンドセンサーが、生体の応用研究に利用されている。

    合成ピンクダイヤモンドは、CVD 法と HPHT 法で合成されている。赤外分光では加熱による 1450 cm-1 の他、孤立窒素のピークが確認される。さらに CVD 法合成ピンク石では、C-H 関連のピークもみられた。それぞれの製法について蛍光スペクトルを測定したところ、NV センタによるピークがみられた。

  • 齊藤 宏, 小滝 達也, 上杉 初
    p. 8
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    498nm および 505nm フォトルミネッセンスピークは、高温高圧(HPHT)処理により、消失することが知られている[1]。しかし、これらのピークが、稀に HPHT 処理後の無色ダイアモンドに残存する例が報告されている[2]。

    弊社で検査した HPHT 処理ピンクダイアモンドにおいて、498nm および 505nm フォトルミネッセンスピークが認められた。この HPHT 処理ピンクダイアモンドには、非常に強い NV センターがあったが、GR1 は検出されなかった。

    そこで、TypeⅡ a 天然ピンクダイアモンド71石とブラウンダイアモンド 100 石のデータを調査したところ、498nm と 505nm にフォトルミネッセンスピークを有するピンクダイアモンドは 4 石、ブラウンダイアモンドは 36 石であった。

    これらのピンクおよびブラウンダイアモンドのうち、前述の HPHT 処理ピンクダイアモンドの NV センターと比較すると弱いが、ブラウンダイアモンド 2 石のみで強い NV センターが検出された。

    3 石のピンクダイアモンドで、非常に強い NV センターが認められたが、これらのピンクダイアモンドに 498nm と 505nm の両方にピークを示すものはなかった。上記ピンク 3 石およびブラウンダイアモンド 2 石には、GR1 が存在した。ブラウンダイアモンドの他の 64 石からは、強い NV センターは検出されなかった。

    今回の調査では、498nm および 505nm ピークは、天然ピンクダイアモンドで 6%、天然ブラウンダイアモンドで 36%認められた。さらに、そのうち、強い NV センターを示すダイアモンドは、ブラウンで 2 石認められたが、ピンクでは認められなかった。

  • 小竹 翔子
    p. 9
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    メレダイヤモンドはジュエリーや時計の装飾に使用される重要な宝石素材である。最近 3-4 年で無色の合成メレダイヤモンドが市場で多く見られるようになり、天然メレダイヤモンドと合成メレダイヤモンドの混在事例が複数報告されている 1,2。最近、照射処理によって緑青に着色された数千個のメレダイヤモンドが検査のために GIA 東京ラボに持ち込まれた。本発表では、その鑑別結果について報告する。

    検査した石はすべて照射処理によって作られた GR1 センターの吸収によって着色しており、ほぼ均質な緑青色であった。FTIR、フォトルミネッセンス、DiamondViewTM を用いた検査によって、そのほとんどが照射処理された天然メレダイヤモンドと鑑別されたが、照射処理された CVD 合成メレダイヤモンドが数個混在していることが分かった。

    今回見つかった CVD 合成メレダイヤモンドのすべてにおいて、FTIR スペクトルでは 3123cm-1 にピークが存在し、フォトルミネッセンススペクトルでは 596/597 nm にダブレットピークがみられた。これらのピークはアニーリングによって強度が弱くなるか、消失することが知られており 3、今回見つかった CVD 合成メレダイヤモンドは、合成後、アニーリング処理されずに照射処理が施され着色したものと考えられる。

  • -触媒担体へのダイヤモンドの応用-
    片岡 直人, 白石 美佳, 中川 清晴, 安藤 寿浩, 蒲生西谷 美香
    p. 10
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    はじめに

    我々は、ダイヤモンドの表面科学的研究を通じて、その表面構造の特異性が、触媒担体としての有用性につながるとの考えで研究に取り組んできた。例えば、メタノール分解による水素生成反応において、ダイヤモンド担体は、担持金属に対して、他の担体には見られない触媒活性を発現させることを明らかにしている。ダイヤモンドの触媒担体への応用研究から、その担体表面の触媒微粒子を成長点として、直径数十 nm 程度の繊維状ナノ炭素(carbon nanofilament:CNF)が生成することに注目し、材料化学的研究を進めている。本発表では、触媒担体としてのダイヤモンドと CNFs の複合材料であるマリモカーボンの合成、構造および応用について述べる。

    実験及び結果

    触媒担体としてのダイヤモンド粉体(粒径 0.5 μm 以下)は、空気中 400 ℃から 450 ℃で酸化処理後(O-dia.と表記)用いた。O-dia.は触媒金属塩の水溶液中に含浸し、水分除去後、400 ℃で酸化処理してダイヤモンド担持遷移金属触媒(以下 M/O-Dia.と表記。M: Ni, Co, Fe 等) を得た。図1 左上の灰白色の粉体は、Ni/O-dia.触媒である。図1右上には SEM 像を示す。触媒金属量は、ダイヤモンド担体重量に対して1~5 wt%とした。マリモカーボンの合成は、Ni/O-dia.触媒を石英製ボートに入れ、気相合成装置を用いて 400 ℃から 600 ℃程度でメタンと接触反応させることにより行った。図1左下に合成後の生成物を示す。CNFs の生成によって灰白色から黒色に変化している。図1右下は、生成物の SEM 像である。その直径は数十μm 程度のマリモ様の球状であり、マリモカーボンを構成する CNF の直径は数十 nm 程度であった。

  • 中嶋 彩乃, 古屋 正貴
    p. 11
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    2018 年の宝石学会(日本)でカラーチェンジ・ガーネットについて考察した中で、マダガスカル Bekily から産出するパイロープ-スペサルティン・ガーネットには、バナジウムを多く含有することで、ガーネットには存在しないとされた青色を、D65 光源下では示すものを紹介した。それはまさにアーサー・コナン・ドイルの小説 「The adventure of the blue carbuncle」 で描かれた青いカーバンクルを連想させるものだった。

    しかし、その内容や時代背景を考えるとドイルのブルー・カーバンクルは、青いカーバンクル(ガーネット)というよりブルー・ダイアモンドとして有名なホープ・ダイアモンドがそのモデルとなっていると考えられ、検証を行った。

    ドイルが描いたブルー・カーバンクルにはガーネットより、ホープ・ダイアモンドとの多くの共通点が見られる。第一に、青いカーバンクル(ガーネット)は、当時存在を知られていなかったこと。第二に、その宝石についてホープ・ダイアモンドと共通する記述が多くあること。第三に、その小説が発表された 1892 年以前に、ホープ・ダイアモンドはドイルの住むイギリスで所有されており、人々の注目を浴びるものであったことである。

    第一の、青いガーネットの存在が知られていなかったことは、Bekily のカラーチェンジ・ガーネットの発見が 1999 年のことであり、他のカラーチェンジ・ガーネットについて報告されたのも 1970 年代以降のことであることから、当時は青いガーネットは認識されていなかったことがわかる。(K. Schmetzer 1999)

    第二のホープ・ダイアモンドとの共通点については、結晶した炭素であること(”crystallized charcoal”)、ガラスをパテのようにカットすること(”It cuts into glass as though it were putty”)、ブリリアンシーのあるシンチレーションが強い青い石であること(”brilliantly scintillating blue stone”)などの記述が当てはまることなどである。

    第三の時代背景については、この小説が発表されたのは 1892 年であるが、それ以前のホープ・ダイアモンドについて調べると、1851 年のロンドン万国博覧会で公開されており、広く人々の注目を集めている。そして 1887 年には Henry Thomas Hope 氏の孫の Francis Hope 氏が相続することが裁判で決定される中、相続問題と裁判が数多く報道された。そのため、執筆時のドイルの目に触れたことは容易に想像できる。

    このような観点から、ドイルが小説の中で描いたブルー・カーバンクルは、ホープ・ダイアモンドがモチーフになったと考える。

  • 貞松 隆弥, 畠 健一
    p. 12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    はじめに:天然ダイアモンドの中心的存在デビアス社が 2018 年合成ダイアモンドの販売を開始した。デビアス社が合成ダイアモンドの販売に踏み切ったことが、世界のジュエリービジネス業界に衝撃を与えている。

    1906 年、フランスのベルヌイ氏が合成ルビーを発明し、天然ルビーの価格は5分の 1 まで下落した。そこで、ロンドンの商工会議所内に鑑別部が設けられ、鉱物学を土台として天然・合成ルビーの見分け方を研究、鑑別方法を編み出し成功した。その後、英国宝石学協会 FGA として世界最初の鑑別機関として創設された。FGA で学んだロバート M シプリーはアメリカにて米国宝石学協会 GIA を創設した。

    鑑別機関によって鑑別技術を中心とした宝石学が世界に普及した。土台は鉱物学であるが、その鉱物学の「学とは真理の追究」である。鉱物の見分け方技術を土台として、鉱物を通して地球を知るための学問である。当、宝石学会(日本)の創立者のお一人砂川一郎氏の著書「宝石は語る」のサブタイトルは、宝石は地下からの手紙と紹介されている。宝石学として鑑別技術の研究は必要不可欠ではあるが、真理の追求として宝石学とは、地球を、そして人を知るための学問としてとらえる時代を迎えたのではないだろうか

    ダイアモンドは永遠の輝き:宝石で身を飾る宝飾文化は人類の精神文化の原点であると考えられる。その前提となる大地の石が人に生きる力を与えてくれた石器時代、それは物質文明の原点であると言える。更に宝石は地球とともに進化を果たしてきた故に、宝石は地球を知るための学問と言わしめている。そして 20 世紀に開かれた宇宙への扉は、21 世紀を迎え本格化し、時代は宇宙時代を迎えている。

    2004 年、アメリカのハーバート大学・天体物理学センターは 50 光年彼方に宇宙最大のダイアモンドの塊を発見した。ケンタウルス星座の中に位置する白色矮星 BPM37903、その中心部 1500 キロがダイアモンドであることを波動分析により確認された。

    このダイアモンドの星・白色矮星はその後、超新星爆発を起こし、爆発によって生みだされた数種の原子とともに宇宙にばらまかれる。その後宇宙のチリは集まりはじめ新たな太陽を誕生させる。50 億年前、わたしたちの太陽もそうしたダイアモンド星の超新星爆発から誕生したことを現代天文学は雄弁に語り始めた。

    宇宙時代を迎え、宝石は地下からの手紙から、いま、宝石は宇宙からのメッセージの時代を迎えようとしている。天然ダイアモンドの秘められた真実を語るために、天然ダイアモンドは永遠の輝きその真実を求めて、天文学からの視点から考察したので報告する。

    天然ダイアモンド VS 合成ダイアモンドを考える上での重要な視点であると確信する。

  • 福田 千紘, 宮﨑 智彦
    p. 13
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    トパーズは 11 月の誕生石にもなっている良く知られた宝石であり OH に富む OH タイプと F に富む F タイプの2つに大別される。これらは屈折率の差により容易に区別可能で宝石鑑別の現場では宝石用の屈折計で識別することが可能である。鉱物中に F を含有すると屈折率が低くなることが知られておりトパーズの場合も屈折率は F タイプが α=1.61 付近、OH タイプが α=1.63 付近になるものが多く若干のばらつきがみられることがある。このばらつきは OH と F の比率によると考えられている。

    本研究では直接 OH と F の含有量を局部破壊検査で測定することにより屈折率の変化と F または OH の含有量の関係を明らかにすることを試みた。試料は F タイプのものを 20 個と OH タイプのカット研磨されたものを 15 個準備しそれぞれ屈折率を測定した。F タイプの 20 個の内褐色系のものが 2 個で残り 18 個は照射処理によるブルートパーズである。H(OH)と F の分析は LIBS を用いて行った。F は Ar 雰囲気下ではうまく測定できないことが分かっており He 雰囲気下で測定した。H の発光スペクトルは 656.286nm を F の発光スペクトルは 685.602nm を使用した。

    屈折率測定の結果 OH タイプと F タイプのほぼ中間の屈折率を持つ試料は得られなかった。F タイプは α=1.604~1.613 まで、OH タイプはα=1.624-1.629 までそれぞればらつきがみられた。 F タイプは褐色系のものが α=1.604-1.605 と低い値を示し青色系が α=1.607-1.613 と比較的高い値を示した。褐色のものは他のものとは異なる産地で F の濃度も異なることが期待される。

    LIBS 分析の結果、F タイプ及び OH タイプの双方から F 及び H が検出された。H の発光強度はOH タイプの方が強く含有量の差を示唆している。F の発光強度も同様に F タイプの方が強いがOH タイプのトパーズからも相当量の F が検出された。

    これらの結果を踏まえてそれぞれの屈折率と F 及び H の発光強度の関係を紹介する。

  • 江森 健太郎, 北脇 裕士
    p. 14
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    ベトナムは地理的にアジアの宝石が豊な国々に囲まれているにもかかわらず、1980 年代まで商業的な宝石採掘は行われていなかった。1983 年にハノイから北東 150 km の Yen Bai 地区 Luc Yen で地質学者がルビーとスピネルを発見し、系統的な調査が開始された。そして、1987 年にベトナムの地質調査所が同地区にルビー鉱床を発見、1990 年にハノイ南西 300 km の Qui Chaw でも上質のルビーが発見され、話題となった。

    ベトナム産ルビーは品質の良いものはミャンマー産に匹敵しており、正確な原産地鑑別は鑑別機関にとって重要な課題である。また他の色のサファイアは市場性が低く、その宝石学的特性はあまり知られていない。そこで今回は、これらのベトナム Luc Yen 産のルビー、サファイアを新たに入手し、調査を行ったので、その結果を報告する。

    本研究には 2016 年~2017 年にかけてベトナム Luc Yen のマーケットで入手したコランダム 64 個(0.16 ~ 1.70 ct)を用いた。入手時には Luc Yen、An Phu、Chau Binh と区別されていたが、本研究では広義に Luc Yen と一括した。これらについて一般的な宝石鑑別手法に加え、FTIR、紫外可視分光光度計による分光検査、LA-ICP-MS による微量元素測定を行った。特に筆者らが 2015 年宝石学会(日本)で行った微量元素測定と三次元プロットの手法についてアップデートを試みた。

    先行研究では、ベトナム産を含むマーブル起源のルビー(ベトナム、ミャンマー、タンザニア)の識別には Mg-V-Fe の三次元プロットが有効であるとしていたが、今回分析を行ったサンプルには、ミャンマー産のルビーとオーバーラップするサンプルが多く存在した。そのため本研究においては新たに V-Cr-Fe の三次元プロットやオーバーラップする部分に対するロジスティック回帰分析を駆使することでミャンマー産ルビーとのオーバーラップを解消し、原産地鑑別の精度を向上させることができた。また、ブルー系のサファイアについても、V-Fe-Ga の三次元プロットを新たに使用することでベトナム Luc Yen 産のサファイアを他産地と明確に分離することができ、同様に産地鑑別の精度上昇に寄与できることがわかった。

  • 三浦 真, 荒井 章司, 石丸 聡子, Vladimir R. Shmelev
    p. 15
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    ヒスイは古くから装飾用として用いられている宝石である。現在市場に出回っている宝石質ヒスイの殆どはミャンマー産であるが、グアテマラ、日本、カリフォルニア、カザフスタン、ロシアでもヒスイが産出する。中でもロシア北極圏ウラル産のヒスイに関しては地球科学的な研究がいくつか行われているものの 1、その宝石学的な性質についてはよく知られていない。既に閉山されてはいるが、我々は 2013 年夏に北極圏ウラルの Voikar-Syninsky 地域のヒスイ鉱山を訪れる機会を得た。本発表ではその調査の際に採取したヒスイ試料の宝石学的特徴について報告する。ヒスイ産出地域一帯は the Levoketchpel deposit と呼ばれ、 1959 年に地質学的調査により発見された 2。規模が小さい点と品質があまり高くなかったために早くに閉山した様である。ヒスイは、蛇紋岩化したかんらん岩中に複数の岩脈として見出される。ヒスイ試料は白色から薄い緑色、部分的に鮮やかな緑色の部分が混在している。主にヒスイ輝石により構成されているが、副成分鉱物として少量の沸石、長石、クロマイト、ジルコンが見つかっている。紫外可視光分光分析によると、試料の緑色の着色は Cr3+と Fe3+によるものである。レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)により微量元素組成を決定し、他の産地のヒスイ 3,4 との比較を実施した。微量元素組成的に産地毎にどの様な違いが見られるか検討を行った。

  • 荻原 成騎
    p. 16
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    Yooperlite とは、2017 年の夏に Superior 湖の湖岸にて発見された“紫外線蛍光を示す石ころ”である。Yooper とは、発見された場所である Michigan 北部の Upper Peninsula、略して U.P. に由来する。Yooperlite の紫外線によるオレンジの蛍光は、まことに麗しく神秘的であり、パワーストーン愛好者を魅了している。岩石学的には、Syenite の円礫で、蛍光の原因は Sodalite である。蛍光する Sodalite について、特に区別して Hackmanite と呼ぶことがある。Greenland や MontSaint-Hilaire、コラ半島などからの産出が知られるが、いずれも母岩は Syenite である。これらの Hackmanite 蛍光の原因として S や Be が指摘されている。岩石学的には、珍しい石ではない。本研究では、薄片観察に基づき、Sodalite の産状を記載し、XRD による結晶学的特徴付け、EPMA および LA/ICP-MS による主成分/微量成分分析により蛍光の起源を明らかにする。Yooperlite は湖岸に転がる石ころの中でも稀な石であり、現在ではほぼ取り尽されている。そのため現地調査は行っていない。Yooperlite は氷河堆積物中の円礫であるため、礫の母岩である Syenite の産状は見ることはできない。

    顕微鏡観察に基づく Syenite の特徴は、nepheline を欠くことである。Nepheline については、XRD からも検出されなかった。顕微鏡観察から、Sodalite は matrix を充填しており、もともと nepheline があった場所に置換して分布しているように見える。Sodalite が matrix の Nepheline を置換していると考えると、Sodalite の成因は、単純に Nepheline とアルカリの反応

    3NaAlSiO4 + NaCl → Na4Al3Si3O12Cl

    (3Nepheline + NaCl →Sodalite)で説明できる。

    本研究における Sodarite の分析の結果

    格子定数 a=8.8594(49)

    組成 Na3.49Al3.15Si3.07O12Cl1.22

    発表では、Sodalite 中の蛍光に関与している微量元素組成について言及する。研究で用いた Yooperlite は、Mr.Stone 吉田様から提供された。

    質問などは ogi@eps.s.u-tokyo.ac.jp まで

  • 福田 千紘, 西島 武志, 宮﨑 智彦
    p. 17
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    近年金価格の上昇に伴い金製の装身具全般の価格上昇した。アクセサリーにおいては前述の理由で高品位の貴金属を使わず低品位の貴金属を使用することが多くなっている。これらは高品位の貴金属に比べ卑金属の使用率が多い。よってイオン化傾向の高い金属の比率も高く汗などにより溶出する金属も多くなると考えられる。

    本研究では実際に医療機関で入手した金属アレルギーのパッチテストの結果とその対象元素を参考に低品位の貴金属に含まれる各種金属元素の含有量を調査した。

    試料は市販されている低品位の貴金属合金として Au 合金は 41.6wt%以下(K10 相当以下)のものを Pt 含有合金は 20wt%以下のものを入手し EDXRF で組成分析を行った。国内では金合金は Au:37.5wt%(K9 相当)以上、Pt 合金は Pt:85wt%(Pt850)以上でなければ貴金属として認められていないが今回はそれ以下の純度のものも便宜的に低品位貴金属として表記した。定量分析にあたり FP バルク法では理想値から乖離した結果を示すものが見られたため特定の元素は標準試料を用いて定量値を計算した。

    分析の結果、Au 及び Pt の含有量は刻印表示通りであり誤差の範囲で理想値と一致した。それ以外の元素として Ag, Cu, Pd, Zn, Ni 等が検出された。Ag, Cu, Pd は割金として一般的に使用されており高品位の貴金属合金にも使われている。Ni は”ホワイトゴールド”には銀色の Au 合金を得るためによく使用されているが低品位貴金属においては”イエローゴールド”からも検出されるものが見受けられた。

    比較対象として歯科治療用の健康保険対象となる金銀パラジウム合金も同様の条件で組成分析を行った。その結果 JIS で定められている 12wt%の Au と 20wt%の Pd 以外に 50wt%程度の Ag、他には Cu, Zn, Ir, In 等が検出された。歯科用金属と低品位貴金属を比較すると共通する元素がいくつか見られた。

    低品位貴金属は比較的低価格で硬度も高く扱いやすい反面イオン化傾向の高い元素の含有量が多くなる傾向が認められる。これらに感作する場合は取り扱いに配慮が必要と考えられる。

  • - ゾル-ゲル法によるオパール合成実験 -
    嶽本 あゆみ, 田邊 俊朗
    p. 18
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    【緒言】 液体原料からシリカガラスを合成するゾル-ゲル法は、加熱を経ず室温で実施できる簡易な実験である。試薬計量ならびに混合という単純な操作、触媒による生成物の比較、加水分解反応と脱水縮合反応の理解、遊色効果の観察に基づく光の干渉の理解、最終的な生成物からの収率計算と、一つの実験系を用いて学生の到達目標毎の課題を与えることができる。合成したシリカガラスが沈殿し確認できるまでにはやくとも二週間程度を要するが、連続した実験授業の中で長期休暇の前後に組み込む等、計画的な授業構成により対応可能である。

    今回は高専本科一年の実験授業において触媒による生成物の比較を試みながら、宝石オパールの遊色効果や昆虫の翅の構造色などの解説を行った。

    【方法】 沖縄工業高等専門学校生物資源工学科本科一年生の専門必修科目である「バイオテクノロジー基礎実験」において、オルトケイ酸エチル. エタノール, 精製水の混合[1]における加水分解反応(式1)の触媒として、アルカリ試薬(アンモニア、水酸化ナトリウム)ならびに酸試薬(酢酸、リン酸、塩酸)の中から班ごとに 1 種類を選び、混合操作を実施した。6 週後の同授業において、生成物の観察ならびに収率計算を行った。なお、本実験の反応式は下記の通りである。

    (式 1) Si(C2H5O)4+4H2O→Si(OH)4+4C2H5OH

    (式 2) Si(OH)4→SiO2+2H2O

    【結果ならびに考察】 アンモニア触媒では生成物から遊色効果が確認されたがゲル化は進んでいなかった。水酸化ナトリウム触媒では透明なゲルが生成され沈殿していた。酸触媒は 3 種類ともに 6 週後時点ではゲルが生成されていなかったが、17 週後に酢酸触媒を用いた 2 班の片方の液全体がゲル化していることが確認された。アルカリ条件下ではコロイダルなゾルが、酸性条件下ではポリメリックなゾルが生成され、これらは加水分解時の水の量にも影響を受ける[2]。今回の結果に基づき、アルカリ触媒と酸触媒とで混合比が異なるプロトコルの準備、酸触媒での触媒量と合成期間について、今後検討が必要である。

  • 勝亦 徹, 相沢 宏明, 小室 修二
    p. 19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    はじめに

    結晶化学を学習する際の導入教育として実際の結晶に触れることは大変意義深いことと思われる。しかし、学術的な価値が高い結晶の標本は、高価で入手困難なものが多く、教室などでの多人数での使用には適さない。

    ここでは、結晶化学の効果的な導入教育を目的として、容易に入手可能な市販の「さざれ石」を用いて簡単な標本を作製した。

    作製した標本と実施状況

    図 1 のように「さざれ石」として多種類の結晶が販売されている。テーマに沿って試料を選び、宝石名および化学式 1 を印刷した台紙に貼り付け、図 2 のように「宝石の標本」を作製した。台紙は、持ち帰りに便利なように L 判のフォトプリント紙を使用した。L 判の写真立を使うと見栄えの良い「宝石の標本」が完成する。

    この「宝石の標本」作りは、毎年7月~9月に開催される大学のオープンキャンパス、春期に開講している無機化学の授業、高等学校への出張授業、毎年11月に開催される大学祭、関連自治体の文化祭典などで結晶化学に興味をもっていただく企画として実施している。

    実際の結晶に触れる試みとしては、FZ 法を使ったガーネットやスピネル結晶の育成実験も実施しているが、準備の容易さ、安全性、実施に係わる費用、多人数に対して実施可能など、手軽な結晶化学の導入教育として「宝石の標本」作り体験の利点は多いと思われる。

  • 渥美 郁男, 小川 日出丸
    p. 20
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    現在、日本においては先端技術による宝石サンゴの分類が行われている。ミトコンドリア遺伝子の塩基配列を解析した系統分類*1や ICP-MS などでサンゴの骨軸中の微量元素分析*2などによる分類も行われている。

    そこで本研究は簡易的検査法で日本近海のアカサンゴと地中海のベニサンゴの判別法を模索した。特に両者の硬度違いと拡大検査に焦点を絞り、両者の比較が識別に利用ができるか検証を行なった。また特定の濃赤色を示すアカサンゴは日本のさんご業界では伝統的に「血赤サンゴ」と呼ばれている。それらの色範囲についても言及する。

  • 猿渡 和子, 三浦 真, 岩崎 望
    p. 21
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    宝石珊瑚は、日本が主要な原産国・輸出国である宝石です。近年、価格の高騰によって、乱獲や密漁が横行し、資源の枯渇が心配されています。これらの問題の解決策の一つとして、科学的に日本産と証明することが考えられます。Vielzeuf et al. (2018)によると、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)を用いた化学組成分析によって、地中海産と太平洋産のPbとBa比に違いがでることが指摘されました。本発表では、様々な日本近海産(高知県、鹿児島県、沖縄県、長崎県)と地中海産、フィリピン産、ミッドウェー近海産試料のLA-ICP-MSを用いた化学組成分析を行い、微量元素の比較から産地鑑別の可能性を議論します。

  • 南條 沙也香, 小松 博
    p. 22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    古来より日本では天然真珠が産出していた。マルコポーロは東方見聞録の中で日本の真珠について「この国は多量の真珠が産出する。ばら色をした円い大型の、とても美しい真珠である。ばら色の真珠の価格は、白色真珠に勝るとも劣らない」 *1 と表現している。今回はこのばら色と称された真珠とはどのようなものか、現在の状況から推定した。

    日本に古来より生息し、天然真珠が採られていたと言われているアコヤガイは赤い色素を有していない。従って「ばら色」という表現は干渉色による赤色を発現しているテリの良い真珠を指していると考えられる。干渉色は構造から発現される色であり、真珠の場合の赤色の干渉色は厚さ約 0.33μm 程度の結晶層が積層された場合に発現するということが報告されている(小松ら;宝石学会誌,2014)。今回は電子顕微鏡を用いてピンク系の養殖アコヤ真珠の結晶層の観察を行い、これらを確認した。またテリに最も影響を与える結晶層の部位やその要因についても考察を行った。

  • 矢﨑 純子, 鈴木 千代子, 小松 博
    p. 23
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
    会議録・要旨集 フリー

    真珠の品質要素の中で、テリは最も重要であるとされているが、通常経験者の目視によって評価されている。

    今回、真珠のテリの評価方法について、国立真珠研究所報告(1956~1978)やその後の報告を調べ、真珠のテリ計測方法をまとめた。その中で現在測定できるとされる機器で真珠のテリ測定を試みた。また、当研究所では、1997 年に真珠に映る光源像の輝度・拡散値よりテリを計測する方法(2010 年宝石学会、田中ら)、2014 年に真珠を拡散光源に接触させたときの干渉色を測定する方法(2014 年宝石学会、小松ら)を発表してきたが、この方法による測定も併せて行った。その結果、光沢計では真珠表面の荒れ段階は測定できるが、いわゆるテリの測定は難しいことがわかった。

    次に、各測定法の特徴をまとめ、テリ測定方法によるテリ評価を試みた。真珠連材における評価を輝度と干渉色値を併用して行うことによって、客観的なテリ評価がある程度可能であることを検証した。

  • 山本 亮, 小松 博
    p. 24
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/03
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    アコヤ真珠の大部分は、一般に様々な加工が行われてから市場に流通する。その加工工程のひとつである漂白にて、加工キズと呼ばれる“ひび”や“スポット(白斑)”などが発生することがある。今回、この“スポット”と呼ばれる加工キズについて調べた。

    “スポット”とは漂白で発生した主に円形状の加工キズを指すが、内部に放射状の亀裂をもつもの、円形状の輪郭のみのものなど様々な形態のものがある。また、スポットはかつて真珠を輸出する際に行われていた輸出検査においてチェックの対象となるものであり、

    その理由は真珠を急激に劣化させる可能性が高いことであった。しかし、スポットに対する見解は取り扱う業者により異なること多く、中には経年劣化しないものがあるという話を耳にすることがある。

    今回のこのスポットとされるものの中から、形状の違うものをいくつか選出し、構造的な違いによる分類ができるかを調べた。また、加速試験を行い形態の違いによる劣化の進行に違いが現れるかを調べた。

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