宝石学会(日本)講演会要旨
平成26年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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平成26年度 宝石学会(日本) 講演論文要旨
光学分割及び散乱異方性としての宝石評価法の提案
*川口 昭夫二宮 洋文
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p. 8-

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抄録

緒 言:宝石評価法としての鑑定士の肉眼目視は,経験差・体調・恣意性・観察環境・光源などに左右される懸念から,時に購入者の混乱の原因にもなる.これに対してより高い客観性や再現性を持つ測定装置も提案されているが,現時点ではその根拠となる原理や官能評価との対応に必ずしも明確な説得力を持つとは言い難い. 筆者らは回折法としてのゴニオメータを応用することで宝石の輝きを「多面体による光学散乱」として観測し,可算性のある物理量として計測した結果,いくつかの定性的傾向が数値として認められたので報告する. 実 験:光源には赤色レーザー光または直進性が比較的に良好な白色LED光を用いた.この光源の角度位置を球面極座標 (φ,θ)上で,常に光束が試料を照射するように移動させることで「宝石に対する等方的光源入射」の近似とした.このとき試料のブリリアントカットダイヤモンドから来る散乱光(輝点)を形状設計された曲面スクリーン(今回は半径100mmの放物面)に投影し,「輝点」の形状・数・分布方位などをカメラで撮像し,解析ソフトWinROOF(三谷商事)で解析した.このデータを光源の角度位置のステップ数で算術平均し数値化する一方で,カメラ感度の段階的変化によって,統計量として「輝点」の相対強度分布を見積もった. 結果・考察:今回は投影面として試料位置(=光源の移動する球中心)と同じ位置に「焦点」を持つ放物面スクリーンを採用したが,他の任意形状の面(平面,楕円面,等)も利用できる.また「スクリーンへの投影」だけでなく「(曲面)鏡による反射像」も可である. ブリリアントカットダイヤモンドのような多面体に入射した単一光源からの直進光は,試料内外の稜によって分割され(時には全反射によって内部に戻され),外部に放射される角度条件の光路が放射・観測される.これが「(カットされた)宝石の輝き」に相当すると考えれば,問題を「光束の(無限回の)光路分割」と解釈することができる.そこで「輝点」のサイズを立体角Ω (strad.)に換算した結果をヒストグラム化したところ,立体角の数分布の一部に「指数則 N(Ω)=A0exp(-λΩ)」が認められた.(λ>0) この分布(と指数則からの逸脱)を特定方位(たとえばブリリアントカットのテーブル面方向のθ~0付近)毎に数値化することによって,使用環境(リング,ネックレス,はめ込み,等)に近い状態での評価が可能になると同時に,各使用環境に最適化したカットデザインの提案ができるものと考えている.

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