宝石学会(日本)講演会要旨
2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
会議情報

2022年度 宝石学会(日本) オンライン講演会発表要旨
教材としての宝石活用の試み
- ゾル-ゲル法によるオパール合成の経時変化 -
*嶽本 あゆみ田邊 俊朗
著者情報
キーワード: Experimental Education
会議録・要旨集 フリー

p. 17

詳細
抄録

【緒言】 液体原料からシリカガラスを合成するゾル-ゲル法は、加熱を経ず室温で実施できる簡易な実験であり、高等専門学校の比較的低学年でも操作を行いやすい。沖縄工業高等専門学校生物資源工学科では、本科 1 年生の専門科目であるバイオテクノロジー基礎実験において、 2019 年度よりゾル-ゲル法によるシリカガラスすなわちオパールの合成実験を行っている。一連の実験系を用いて、試薬の軽量と正確な記録、加水分解反応と脱水縮合反応、触媒の比較、光の干渉による遊色効果ならびに構造食、生成物からの収率計算を、理解の到達目標としている 。

2019 年度に実施した当該実験において合成したシリカガラスを保管していたところ、酸触媒として用いた塩酸と酢酸とで、ゲルの状態に差異が生じた。今回は、これらの経時変化ならびに 2021 年度に実施した実験授業の結果について述べる。

【方法】 2019 年度はオルトケイ酸エチル. エタノール, 精製水の混合における加水分解反応(式1)の触媒として、アルカリ試薬(10%アンモニア水、 1mol/L 水酸化ナトリウム)ならびに酸試薬(99.7%酢酸、 85%リン酸、 1mol/L 塩酸)から班ごとに 1 種類を選び、合成操作を実施した。 2021 年度は触媒を28%アンモニア水に統一し、劇物のため教員が計量を行った。

Si(C2H5O)4+4H2O→Si(OH)4+4C2H5OH

Si(OH)4→SiO2+2H2O

【結果ならびに考察】

2019 年度実験において酢酸ならびに塩酸を触媒とした試料全体が透明なゲルとなり、実験室内に保管していた。 2020 年度時点、酢酸を触媒としたゲルは体積の収縮と固化が確認され、塩酸を触媒としたゲルは弾力性を保ったままであった。酸性条件下ではポリメリックなゾルが生成され、これらは加水分解時の水の量にも影響を受ける [2]ことがわかっているが、水分量や pH 以外にもゲルの形成への影響が考えられる。 2020 年度 28%アンモニア水を触媒とした試料は、 10 班中 1 班のみが極めて美しい、オパールと呼ぶにふさわしい遊色効果をもつ試料が得られた。同一プロトコル・同一操作において結果に大きな差異が見られたため、条件の詳細を明らかにすることで、遊色効果の有無による実験操作の評価が可能になると考えられる。

著者関連情報
© 2022 宝石学会(日本)
前の記事 次の記事
feedback
Top