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宝石や鉱物中には、苔状、樹枝状など有機的な模様が見られる。モスアゲートやデンドリティック・インクルージョンはその代表例であり、従来は鉄やマンガンなどの微量元素を含む過飽和溶液が岩石中に浸透し、沈殿したものと説明されてきた。しかし、それらの形態の説明としては不十分ではなかっただろうか。
本発表では、 Marco Campos-Venuti 氏の著書『Biominerals』で示された、アゲートやクォーツ中に見られる有機的模様を、金属元素を代謝する微生物活動の痕跡として捉える可能性について紹介する。同書では、モス状、樹枝状などの模様は、鉄やマンガンを利用する独立栄養細菌や古細菌などの微生物群集が形成した「微生物岩(microbialite)」である可能性が示されている。
この仮説を支持する要素として、微生物コロニーとの形態的類似が挙げられる。図のように細菌コロニーは、栄養濃度(縦軸)や拡散率(横軸、培地濃度の低さ)によって樹枝状、放射状、塊状など多様なパターンを形成する。これらは、デンドリティック・インクルージョンや、ライモナイトを伴うクォーツ中の模様と類似する。また、マンガン主体の黒色デンドライトの先端に鉄酸化物・水酸化物による黄色から褐色の領域が発達する例は、微生物が酸化還元電位の差が大きく、エネルギー準位が高いマンガンが先に利用され、その後鉄が利用された代謝過程を反映した可能性がある。
さらに、アゲートやジオードの形成においても、微生物活動が関与した可能性がある。固化前のシリカゲルは負に帯電しやすく、鉄、マンガン、銅などの金属イオンを吸着・濃集しうる。そこに地下水や熱水が流入し、微生物のバイオフィルムや代謝活動が加わることで、層状アゲートや特徴的なインクルージョンが形成されたと考えられる。一方、ジオード内側の透明な結晶部は、比較的純粋な溶液から直接成長した無機的結晶化の産物と解釈できる。
このように、アゲートやクォーツ中の有機的模様を微生物活動の産物として捉えることは、鉱物と化石の境界を再考させるもので、従来「仮像」や「無機的沈殿」とされてきた鉱物模様の成因理解がさらに深まることが期待される。