抄録
背景. 縦隔に原発する胚細胞腫瘍は稀である. 絨毛癌を含む混合性胚細胞腫瘍を経験したので報告する. 症例. 症例は31歳の男性で, 前医にて胸水貯留を認められ, 当院に紹介された. CT検査にて, 前縦隔に巨大腫瘍を認め, 同部の経皮針生検や腫瘍マーカーの検索の結果, 肺転移を伴う縦隔原発の胚細胞腫瘍と診断した. シスプラチンを含む化学療法を3コース実施したが, 充分な治療効果は得られず, 全身への転移を来し, 治療開始4ヵ月後に死亡した. 剖検にて, 縦隔原発の未熟型奇形腫と絨毛癌の混在する混合性胚細胞腫瘍と診断された. 結論. 縦隔原発の胚細胞腫瘍のうち, 絨毛癌は殊に稀であるが, 予後不良であり, 有効な治療法の確立が望まれる.