肺癌
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総説
  • 笹田 真滋
    2022 年 62 巻 4 号 p. 277-285
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    従来,悪性胸水の診断に際しては,胸腔穿刺による胸水検査と盲目的胸膜生検が行われてきたが,その診断率は決して満足できるレベルではなかった.特に悪性胸膜中皮腫は前述の方法での陽性率は低く,誤診を招くおそれもあるため慎重な判断が必要である.我が国では1990年以降内科的胸腔鏡が導入され,胸膜病変を直接観察し生検することが可能となり診断率が飛躍的に向上した.肺癌診療においては病理診断のみならずバイオマーカー検索にも有用である.しかし胸膜病変はその原因にかかわらず肥厚,線維化し硬くなることが多いため生検技術の向上が求められる.本稿では内科的胸腔鏡の進歩と胸膜生検法の工夫について概説する.

  • 佐藤 崇, 猶木 克彦
    2022 年 62 巻 4 号 p. 286-291
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,小細胞肺がんの分子サブタイプがASCL1,NEUROD1,POU2F3,YAP1といった細胞系統転写因子によって規定されることが報告されている.また,これら神経内分泌細胞系統因子の検討と併行して,MYCファミリー転写因子MYC,MYCL,MYCNの小細胞肺がんにおける役割も探索され,それぞれが単なるがん遺伝子ではなく神経内分泌分化のサブタイプを規定する転写プログラムをコントロールしていることが示唆されている.小細胞肺がんと同じく神経内分泌がんに分類される肺大細胞神経内分泌がんにおいては,小細胞肺がん同様に神経内分泌細胞系統因子の役割が予測されるものの,この組織型は遺伝学的にも分子病理学的にもより不均一であり,その意義に関してはさらなる研究が望まれる.肺神経内分泌がんにおける分子サブタイプ分類のトランスレーショナルな意義も検討され,免疫療法を含む薬剤への感受性の違いやサブタイプに関連した腫瘍の分化状態の多様性・可塑性が報告されている.本稿では,最近の肺神経内分泌がんの分子サブタイプ分類に関し,研究が進んできた経緯から今後の展望までを概説する.

原著
  • 隅井 允彦, 高山 裕介, 角本 慎治, 三島 祥平, 益田 健, 庄田 浩康
    2022 年 62 巻 4 号 p. 292-298
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    背景・目的.オシメルチニブはEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の治療において1次治療での使用が推奨されているが,有害事象として薬剤性肺障害の発生頻度が高いことが知られている.また既存肺のinterstitial lung abnormalities(ILA)の存在が薬剤性肺障害のリスク因子となることも報告されている.そこで我々は当院での使用経験をもとにILAがオシメルチニブによる薬剤性肺障害のリスク因子となりうるか検討した.対象・方法.2018年9月から2020年9月までに当院でオシメルチニブを投与した進行期非小細胞肺癌106例について,後方視的に検討した.結果.多変量ロジスティック回帰分析により,投与前のILAの存在は有意なリスク因子であることが示された.またILAのタイプ別の検討では,subpleural fibroticの症例で重症度の高い薬剤性肺障害を認める傾向であった.結論.ILAはオシメルチニブによる薬剤性肺障害のリスク因子となりうる.特にsubpleural fibroticパターンを呈する症例では重症化リスクが高く注意が必要である.

  • 吉川 真生, 田尾 裕之, 水谷 尚雄
    2022 年 62 巻 4 号 p. 299-303
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.肺腺癌の悪性度予測における高分解能CT検査およびFDG-PET/CT検査の有用性を検証する.方法.2016年4月から2021年2月までに,当院で充実径3 cm以下(cTis/T1)の肺腺癌に対して切除を行った症例を対象とした.WHO第5版のグレード分類に基づいて症例を3群に分け,consolidation tumor ratio(CTR),SUVmaxを含む臨床病理学的因子との関係を調査した.また,高悪性度を予測するCTR,SUVmaxのカットオフ値をROC解析で求め,両者を組み合わせた評価方法について検討した.結果.対象は78例で,3群間でCTRおよびSUVmax値に有意な差を認めた.高悪性度を検出するカットオフ値は,CTRが97.6%,SUVmaxが3.35であった.CTR ≧98%かつSUVmax >3.35を選択基準とすると,高悪性度群検出の感度,特異度はそれぞれ87.5%,85.5%であった.結論.高悪性度のcTis/T1肺腺癌は,高分解能CT検査とFDG-PET/CT検査の結果を組み合わせることにより高い精度で検出し得ることが示唆された.

  • 松本 瞭, 相馬 逸人, 庄司 剛, 片倉 浩理, 嶋 一樹, 高橋 珠紀, 西岡 慶善, 酒井 直樹
    2022 年 62 巻 4 号 p. 304-310
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.非小細胞肺癌治療にがん免疫療法が広く用いられるようになった.がん免疫応答において所属リンパ節でのTリンパ球のプライミングが必要と考えられている.この観点からすると,リンパ節郭清後のPD-1/PD-L1阻害薬の使用時には効果が減弱する可能性が考えられる.当院での本薬使用例でその臨床的特徴につき検討を加えた.方法.当院で2020年11月までにPD-1/PD-L1阻害薬を使用した症例を対象に,後方視的に臨床的検討を行った.結果.リンパ節郭清例は25例,非手術例は63例であった.両群における病勢制御率は10例(40%)vs 16例(25%),奏効率は6例(24%)vs 6例(9%),全生存期間の中央値は19.5ヶ月vs 10.5ヶ月(P=0.47),無増悪生存期間の中央値は8.3ヶ月vs 5.6ヶ月(P=0.86)であった.両群におけるgrade 3以上の免疫関連有害事象は4例(16%)vs 7例(11%)(P=0.5)であった.結論.非小細胞肺癌に対するリンパ節郭清を伴う治療的切除後の再発症例に対してもPD-1/PD-L1阻害薬の治療効果は非手術例と比較して劣ることはなかった.

  • 福神 大樹, 長谷川 一男, 大西 幸次, 右田 孝雄, 栗田 英司, 瀬戸 貴司, 田中 謙太郎, 澤田 慎一郎, 鈴木 江郎, 濱崎 晋 ...
    2022 年 62 巻 4 号 p. 311-316
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.わが国では現在,中皮腫の約2倍の発症が予測されている石綿による原発性肺がんの労災保険制度の認定が少なく,その要因として石綿ばく露の診療体制における聴取調査が確立していないことが一因であると考えた.そこで本研究では石綿肺がんの診療体制の現状と今後の課題を考察することにした.方法.肺がん患者・家族(以下,患者)に対してウェブアンケート調査を行い,石綿の健康被害や労災保険等の知識,石綿ばく露の自覚の有無等を質問した.結果.患者が知っている・把握している石綿健康被害に関する知識・情報は,石綿の性質に関する知識>健康被害に関する知識>健康被害を疑う知識・情報という順になった.結論.改善策として当事者団体の啓発活動と相談支援部門の活用による石綿ばく露聴取の体制構築が求められる.

症例
  • 髙橋 秀悟, 三井 匡史, 伊豆川 翔太, 岩井 英頌, 藤嶋 悟志, 矢嶋 信久, 今井 一博, 南谷 佳弘
    2022 年 62 巻 4 号 p. 317-322
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.脊索腫は,遺残した胎生期の脊索から発生すると考えられている稀な悪性骨軟部腫瘍である.仙骨部や頭蓋底部,可動脊椎に好発するが,縦隔腫瘍として傍椎体に発生することがある.症例.54歳,男性.健康診断の胸部単純X線写真で,右上肺野に異常陰影を指摘され,近医を受診.CT検査で上縦隔に45 mm大の縦隔腫瘍を認めた.手術目的に当科へ紹介され,良性の神経原性腫瘍として胸腔鏡下での腫瘍摘出術を施行.HE染色で粘液腫様組織を背景とし,空胞状の細胞質を持つ細胞の索状配列を認め,脊索腫の可能性を疑った.免疫組織化学染色でbrachyury陽性となり,傍椎体に発生した脊索腫と診断した.術後の追加治療はせず,現在も再発は認めていない.半年毎の定期検診を継続中である.結論.今回我々は,上縦隔に発生した脊索腫の1切除例を経験した.

  • 寺師 直樹, 久金 翔, 宮寺 恵希, 加藤 祐樹, 寺嶋 勇人, 鈴木 彩奈, 渥美 健一郎, 清家 正博, 弦間 昭彦, 廣瀬 敬
    2022 年 62 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬による劇症1型糖尿病は稀な有害事象である.肺癌においては非小細胞肺癌での報告が散見される.今回,小細胞肺癌に対するデュルバルマブ投与後に劇症1型糖尿病を発症した症例を経験した.症例.71歳男性,Performance Status 1.糖尿病の既往歴なし.進展型小細胞肺癌cT4N3M1b stage IVAに対して,20XX年5月よりカルボプラチン+エトポシド+デュルバルマブ併用療法が開始された.Day 27より食欲不振,倦怠感が出現し,2コース目投与日(day 30)の検査で高血糖(761 mg/dl),尿ケトン陽性,尿中Cペプチド3.9 μg/日を認め,デュルバルマブによる劇症1型糖尿病と診断した.インスリン治療で血糖コントロールが得られた後に,カルボプラチン+エトポシド併用療法が3コース行われた.著明な治療効果が得られ,その後病状進行はみられていない.結論.小細胞肺癌に対するデュルバルマブ投与後の劇症1型糖尿病発症は稀であるが,緊急性のある免疫関連有害事象であり注意を要する.

  • 蜂須賀 康己, 藤岡 真治, 魚本 昌志
    2022 年 62 巻 4 号 p. 329-334
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.気管腺様嚢胞癌は原発性気管腫瘍の中で最多であるが,遺伝子異常を検索した報告は少ない.症例.症例1:80歳代,女性.呼吸困難を主訴に受診し,CTで声門直下に1.3 cmの腫瘍と孤立性肺転移を認めた.硬性気管支鏡下の腫瘍切除と放射線療法を施行後,肺葉切除を行った.症例2:40歳代,女性.喘鳴を主訴に来院し,CTで上部気管に6 cm長の範囲で腫瘍性狭窄を認めた.硬性気管支鏡下の腫瘍切除とDumonステント留置を施行後,放射線療法を行った.症例3:40歳代,女性.呼吸困難を主訴に来院し,CTで上部気管に6.6 cm長の範囲で腫瘍性狭窄と周囲組織浸潤を認め,症例2と同様の治療を行った.症例4:40歳代,男性.喘鳴を主訴に来院し,CTで気管下部から分岐部に5.5 cm長の範囲で腫瘍性狭窄を認め,症例2および3と同様の治療を行った.4例とも病理組織検査で腺様嚢胞癌と確定診断した.結論.当院における気管腺様嚢胞癌の治療経験と遺伝子異常の有無を報告する.

  • 岩崎 一彦, 原 丈介, 渡辺 知志, 丹保 裕一, 大倉 徳幸, 曽根 崇, 木村 英晴, 斎藤 大輔, 笠原 寿郎, 矢野 聖二
    2022 年 62 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.胸腺癌は年間10万人あたり0.02人に発症する希少癌であり,診断時点で30%の患者が進行期である.診断時の状態から治療導入に難渋するケースが存在する.症例.44歳,女性.20XX年12月末より上腹部膨満感を自覚し前医を受診した.胸部単純CT検査でびまん性肝腫瘍と高度の肝腫大,及び胸腺腫瘍を指摘され当院紹介となった.PET-CTでは胸腺,肝及び骨にFDGの異常集積を認めた.肝生検は困難であり胸腺よりCTガイド下生検が施行され,胸腺癌が検出された.cT1bN2M1b,stage IVb期(OSS,HEP)と診断された.急速な肝機能の増悪,黄疸や高アンモニア血症の出現及び増悪も認めた.当科転科第4病日よりcarboplatin(AUC=6)とpaclitaxel(100 mg/m2)による併用療法を開始した.1サイクル終了時には肝機能は改善し,原発巣及びびまん性肝腫瘍の急速な縮小を認めた.結論.胸腺癌は予後不良な希少疾患である.進行例に対するエビデンスは乏しく,高度な肝機能障害を伴う症例に対する化学療法の報告も少ない.貴重な症例と考え報告した.

  • 後藤 広樹, 吉田 正道, 三木 寛登, 増田 和記, 児玉 秀治, 寺島 俊和, 藤原 篤司
    2022 年 62 巻 4 号 p. 341-344
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.ALK阻害薬はいずれも内服薬であるため,経口投与困難な症例ではその恩恵を受けることが難しい.そのような症例に対する方策として簡易懸濁法を用いた経管投与が挙げられるが,ブリグチニブをはじめとするALK阻害薬に対する簡易懸濁法や経管投与は確立されたものではない.症例.71歳男性.2015年に当科で多発脳転移,多発肺転移,左癌性胸水などを伴うALK陽性肺腺癌の診断に至った.クリゾチニブで治療を開始したが,約10ヶ月で腫瘍が増大したため,2次治療としてアレクチニブ投与を開始した.その後,約4年9ヶ月にわたり腫瘍は良好に制御されていたが,2021年2月より嚥下時のつかえ感が出現した.同症状は徐々に進行し,2021年3月に水分以外の経口摂取が困難となった.上部消化管内視鏡,CTによる評価の結果,食道傍リンパ節の転移巣による食道狭窄が原因と判明した.ALK阻害薬による治療を行うため,胃瘻を造設し,簡易懸濁法を用いてブリグチニブを投与したところ,食道狭窄の改善を得られ,固形物の再摂取が可能となった.結論.簡易懸濁法を用いて胃瘻から投与したブリグチニブが奏効したALK陽性肺癌の1例を経験した.

  • 槌本 朱里, 石川 立, 越野 友太, 池田 拓海, 小橋 建太, 安田 健人, 長尾 喬生, 浅井 悠一郎, 森 勇樹, 千葉 弘文
    2022 年 62 巻 4 号 p. 345-349
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/31
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.胸水貯留をきたす疾患の診断に,局所麻酔下胸腔鏡検査は有用である.しかし,従来の生検鉗子では,病変の性質により検体採取が困難である症例を経験することがある.症例.51歳男性.特発性間質性肺炎の診断で当院通院中に,左胸水の貯留が出現した.左胸水貯留に対して局所麻酔下胸腔鏡による鉗子生検を試みたが,線維化により硬化した病変のため鉗子生検が不可能であった.そのため,局所麻酔下胸腔鏡下クライオ生検を施行したところ検体採取が可能であった.病理所見から胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍と診断した.結論.局所麻酔下胸腔鏡検査によるクライオ生検は,線維化により硬化して鉗子生検が困難な病変の診断に対して有用である可能性が示唆された.

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