肺癌
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原著
  • 伊藤 真也, 林 久恵, 中野 理沙, 安河内 祐太, 原口 哲郎, 井上 周
    2025 年 65 巻 3 号 p. 157-163
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.進行非小細胞肺癌患者を対象に第3腰椎の異なる高位における大腰筋横断面積の違いが予後予測に及ぼす影響について検討した.研究計画.IV期進行非小細胞肺癌でEastern Cooperative Oncology Group Performance Status 0~1の患者37例を後方視的に調査した.第3腰椎ランドマークは横突起と尾側端の2ヵ所を設定しそれぞれの高位における大腰筋横断面積を比較後,同一基準にて低骨格筋量の有無を判定し全生存期間(OS)を比較した.結果.大腰筋横断面積は第3腰椎横突起部よりも尾側端部が有意に大きかった(中央値,11.87 cm2 vs. 9.61 cm2p < 0.001).尾側端で判定された低骨格筋量群のOSは正常群より有意に不良であった(中央値,9.5ヵ月 vs. 21.4ヵ月,p = 0.031).一方,横突起部では両群のOSに有意差はなかった.結論.進行非小細胞肺癌患者の大腰筋横断面積は第3腰椎の高位で大きく異なり,尾側端の大腰筋横断面積を用いることがOSに影響を及ぼす低骨格筋量の判定に役立つ可能性がある.

症例
  • 今里 優希, 神田 響, 石崎 直子, 佐々木 圭, 福本 洋介
    2025 年 65 巻 3 号 p. 164-169
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫関連有害事象(irAE)による心筋炎の頻度は稀だが予後は極めて不良である.症例.81歳,男性.右上葉肺腺癌(cT1bN3M0 stage IIIB)に対しペムブロリズマブの単剤投与を開始した.3コース目day 17で心筋逸脱酵素の上昇と心臓エコーで左室壁運動のびまん性低下と左室駆出率(LVEF)低下(59→31%)を認め,ペムブロリズマブによるirAE心筋炎を疑った.血行動態は安定し自覚症状も乏しく,ステロイドは投与せずに心保護治療のみ行った.心臓MRIではT2強調像での高信号や遅延性造影は認めなかった.以後の定期フォローでは心筋炎発症後1年8カ月経過してもLVEFは30%台のまま改善しなかったが,同時にペムブロリズマブの休薬のみで肺癌は完全奏効を維持していた.心筋炎発症後2年4カ月の時点でLVEFが51%へ急に改善したが,肺癌は依然完全奏効を維持していた.結論.無症候性irAE心筋炎に対してステロイド治療を実施しなかったことが,その後のLVEFの回復遅延と肺癌の完全奏効に影響した可能性が考えられた.

  • 安井 裕美, 大西 隆仁, 浅野 真理, 辰岡 浩樹, 井口 基, 神保 直江
    2025 年 65 巻 3 号 p. 170-174
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.胸部SMARCA4欠損腫瘍は非常に予後不良であることが知られている.確立された治療法はないが,近年免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されている.症例.69歳,男性.自宅で入浴中に体動困難となり当院救急搬送.頭部CTで右前頭葉に長径21 mmの腫瘤があり入院となった.胸部CTで縦隔リンパ節の腫脹があり,転移性脳腫瘍が疑われた.脳腫瘍摘出検体から胸部SMARCA4欠損多形癌(cTXN3M1b,stage IVA)と診断した.Programmed cell death-ligand 1 tumor proportion score 60%と高発現であり,カルボプラチン,パクリタキセル,ペムブロリズマブの併用療法を行ったところ,4コースでpartial response(縮小率53.4%)と効果がみられた.結論.胸部SMARCA4欠損腫瘍に対して免疫チェックポイント阻害薬併用化学療法が有効である可能性がある.

  • 村田 大樹, 東 公一, 津村 健二, 田中 智大, 德永 佳尚, 財前 圭晃, 星野 友昭
    2025 年 65 巻 3 号 p. 175-178
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍は新しい疾患概念であり,治療の主体は薬物療法であるが,その治療レジメンについては確立されていない.症例.60代男性.治療開始4ヶ月前に偶発的に胸部腫瘤を指摘されたが診断に難渋し,外科的肺生検の結果から胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍と診断された.当科へ転院した際には既にperformance status(PS)4であったが,pembrolizumab単剤療法を行ったところ,2サイクル終了時に腫瘍は縮小傾向にあり,PSは0まで回復した.治療開始6ヶ月現在,腫瘍は縮小を維持している.結論.PS不良な胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍に対してpembrolizumab単剤療法が奏効した1例を経験した.胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍は免疫療法が奏効しやすいサブセットである可能性があるが,その治療法は確立されていないため,レジメン選択におけるPS等の重症性について検証していく必要がある.

  • Daiki Murata, Koichi Azuma, Kenji Tsumura, Tomohiro Tanaka, Hiroyoshi ...
    2025 年 65 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    Background. Hemophagocytic lymphohistiocytosis (HLH) is a fatal immune response syndrome characterized by abnormal hyperinflammatory and hyperferritinemia. Case. A patient in their 50s received combination ipilimumab plus nivolumab for recurrent pleural mesothelioma. Eight days after the start of immune checkpoint inhibitor treatment the patient was admitted to our hospital with a chief complaint of fever and gross hematuria. Although the patient was treated with antibiotics, their general condition began to worsen from the 11th day after admission. The patient was diagnosed with cytokine release syndrome and HLH and was treated with systemic corticosteroids and mycophenolate mofetil. Platelet transfusions for thrombocytopenia and continuous hemodiafiltration for acute renal failure were required. The patient gradually improved and was discharged from the hospital on the 39th day after admission. Conclusion. It should be noted that HLH is relatively frequent and can be serious in patients who receive combination therapy with ipilimumab plus nivolumab. An early diagnosis and administration of systemic corticosteroids and immunosuppressive agents is crucial when HLH is suspected during cancer immunotherapy.

  • 福本 洋介, 神田 響, 今里 優希, 佐々 木圭
    2025 年 65 巻 3 号 p. 186-191
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連膵炎や胆管炎は稀である.症例.80歳男性.肺腺癌術後再発に対しペムブロリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を開始.2コース目day 9と3コース目day 6に腹痛を伴うgrade 3の血清アミラーゼ値(AMY)上昇で入院したが,いずれも絶食補液で軽快し退院.3コース目day 22に再び腹痛を伴うgrade 3のAMY上昇を認め入院.CTでは軽度膵腫大を認め,ペムブロリズマブによる免疫関連膵炎と診断.プレドニゾロン(PSL)20 mg/日で治療開始し,80 mg/日への増量で症状消失.以後PSLを漸減も,15 mg/日の時点で腹部違和感にて受診.AMY上昇はなく,肝胆道系酵素の優位な上昇を認めた.CTで膵炎の所見はなかったが,MRCPでは前回入院時に認めた軽度肝外胆管拡張が悪化しており,免疫関連胆管炎と診断.アザチオプリン50 mg/日を併用開始し,75 mg/日への増量で症状は安定し,以後両薬剤を漸減中止できた.結論.免疫関連膵炎治療中に胆管炎が顕在化した1例を報告した.臓器横断的な検索により併存する免疫関連有害事象の早期認識が重要であることが示唆された.

  • 池内 美貴, 門田 和也, 清原 あすか, 今尾 舞, 藤本 佑樹, 久米 佐知枝, 大塚 浩二郎, 鈴木 雄二郎, 宮崎 彰, 田代 敬
    2025 年 65 巻 3 号 p. 192-197
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺扁平上皮癌の膀胱転移は稀である.症例.76歳 男性.右肺門部扁平上皮癌 cT3N2M1c cStage IVB(右肺上葉肺内転移,右胸膜播種,癌性リンパ管症,両側腎周囲腔転移,脾転移,多発肝転移,胃転移)と診断し,1st lineとしてカルボプラチン+ナブパクリタキセルを1コース投与した.その後小腸転移で再発し,2nd lineとしてS-1を投与しpartial responseを維持していた.投与8ヶ月後に小腸転移増大による小腸狭窄で手術を施行した.術後より突然の血尿が出現し,急激に腎後性腎不全を発症し,両側尿管開口部への腫瘍浸潤を認めた.総合的に肺扁平上皮癌の膀胱転移と診断した.血尿出現15日前にあたる入院時CTで左尿管の軽度拡張を認めていた.結論.肺扁平上皮癌の稀少な膀胱転移を経験した.肺扁平上皮癌が膀胱転移を起こし得ること及び軽度の尿管拡張が転移性膀胱腫瘍の早期所見となり得ることを知っておく必要がある.

  • 副島 康平, 松岡 英仁, 桐生 辰徳, 小谷 義一, 加島 志郎
    2025 年 65 巻 3 号 p. 198-202
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.Amphicrine carcinoma(両分泌癌)は同一細胞内に神経内分泌分化と粘液産生性腺細胞分化を認める腫瘍で肺原発は稀である.症例.73歳男性.胸部CTで左舌区に径12 mmの充実型結節病変を指摘された.CT下生検で神経内分泌腫瘍が疑われ,原発性肺神経内分泌腫瘍(cT1bN0M0, c-Stage IA2)と判断し,消極的縮小手術として胸腔鏡下左肺上葉部分切除術を施行した.術後病理検査ではTTF-1陽性のterminal respiratory unit型の乳頭型腺癌部分も一部認めたが,ロゼット様構造を伴うほぼ充実性の浸潤性増殖像が主体で組織内に粘液含有細胞が認められた.免疫染色では充実性の部分で神経内分泌マーカーがびまん性に陽性であり,同一細胞の細胞質でdiastase periodic acid-Schiff染色が陽性だった.以上より原発性肺両分泌癌の可能性のある神経内分泌癌(pT2aNxM0,p-Stage IB)と診断した.術後にカルボプラチン+エトポシドの補助化学療法を行ったが,顕著な好中球減少のため1コースのみで中止となり,術後8か月で早期再発死亡した.結論.原発性肺両分泌癌は予後不良であり,適切な診断による症例の蓄積により治療方法の確立が望まれる.

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