背景.重篤な免疫関連有害事象の1つにサイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome:CRS)がある.CRSの症状や所見は多彩で非特異的であるため,診断に難渋することが多い.症例.76歳男性.左下葉肺扁平上皮癌ステージIVB期と診断され,ニボルマブ,イピリムマブ併用療法を開始した.治療は奏効していたが,4コース目経過中に,高カルシウム(Ca)血症による倦怠感,食思不振を認めたため入院した.生理食塩水1,000 ml/日の投与で血清Caは改善せず,第3病日にデノスマブを投与したところCaは低下した.しかし入院後から発熱,意識障害が出現し,炎症反応は上昇していた.抗菌薬で改善は得られず,CRSと診断し,第10病日からステロイドパルス療法を施行した.その後,プレドニゾロン40 mg/日で後療法を行ったところ症状は改善した.第24病日に退院し,外来でプレドニゾロンを漸減したが,CRSの再燃や血清Caの再上昇は認めなかった.結論.CRSの影響で高Ca血症を発症した可能性のある症例を経験した.
Background. Ectopic adrenocorticotropic hormone (ACTH) syndrome (EAS) caused by lung cancer presents significant therapeutic challenges due to complications associated with hypercortisolemia. Case Presentation. A 65-year-old woman presented with limb weakness and dyspnea. Although pathological confirmation was not obtained, clinical and radiological findings supported a diagnosis of EAS due to lung cancer. Multidisciplinary management addressed complications including transudative pleural effusion, muscle weakness, electrolyte imbalance, hyperglycemia, gastrointestinal bleeding, febrile neutropenia, enterococcal bacteremia, pulmonary aspergillosis, and cytomegalovirus infection. Chemotherapy resulted in tumor shrinkage and normalization of ACTH levels, but could not be continued due to persistent complications. A "titration strategy" using metyrapone led to adrenal insufficiency. Subsequently, a "block and replace strategy" with osilodrostat and hydrocortisone maintained stable cortisol levels. The patient died on hospital day 150. A postmortem examination confirmed small-cell lung cancer positive for ACTH on immunohistochemistry. Conclusion. A "block and replace strategy" involving osilodrostat may represent a potential treatment approach for EAS secondary to lung cancer, particularly when metyrapone is not tolerated.
背景.リンパ節腫大の鑑別は多岐にわたり,悪性腫瘍を併存している場合,原疾患の進行以外にも治療に関連した病態も鑑別となる.また,皮膚病性リンパ節症は薬剤性皮膚障害によっても生じるがirAE皮膚障害に関連した報告例はない.症例.76歳男性,X-2年10月に左胸水のため近医より紹介受診,12月に悪性胸膜中皮腫と診断し,X-1年1月下旬よりipilimumab,nivolumab療法を開始.X-1年2月上旬からgrade 1のirAE皮膚障害が出現し,抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬で対応した.irAE皮膚障害はgrade 3まで悪化しX-1年12月中旬から治療を中断し,2日後からプレドニゾロン内服とした.X年3月上旬の体幹部CT検査で多数の表在性リンパ節腫大を指摘.3月中旬に右鼠径リンパ節を摘出生検し皮膚病性リンパ節症と診断した.結論.irAE皮膚障害によっても皮膚病性リンパ節症が生じ得る.悪性腫瘍治療中にリンパ節腫大が生じた場合,様々な病態を考慮し生検を行うことが望ましい.
背景.胸腺腫は重症筋無力症や赤芽球癆(pure red cell aplasia:PRCA)など,様々な自己免疫疾患を合併する場合があり,胸腺摘除後に発症する例も存在する.進行胸腺腫に対しては,切除を含めた集学的治療が考慮されるが,PRCAの発症はその後の治療を困難にする.症例.55歳女性.検診胸部X線写真で異常を指摘された.CTでは前縦隔腫瘍に加え,複数の右胸膜結節を認めた.CTガイド下生検で胸腺腫(WHO type B2,正岡分類IVa期)と診断した.doxorubicin+cisplatin+vincristine+cyclophosphamide(ADOC療法)による導入化学療法を2コース行い部分奏効を得た.胸腺摘除術および播種結節切除により肉眼的完全切除を行った.術後4ヵ月でPRCAを発症したが,cyclosporine投与で寛解を得た.術後18ヵ月経過し貧血も胸腺腫再発も認めていない.結論.胸腺腫では,術後早期にPRCAを発症する可能性があり,注意深い経過観察が必要である.胸腺腫摘除後に発症したPRCAに対し,cyclosporineによる寛解導入療法が著効した.
背景.肺内リンパ節転移が診断の契機となった胃癌症例は極めて稀である.症例.77歳男性.2年間の経過で増大傾向を示す左上葉肺癌疑いの病変に対して手術を行った.術中に淡黄色の胸水を認めたが肉眼的に播種を疑う病変はなかったため,積極的縮小手術としてロボット支援下に左肺上葉S1+2区域切除(#12,#13リンパ節サンプリング)を施行した.最終診断は左上葉肺癌(微少浸潤性腺癌,pT1miN0M0,pStage IA1)であった.一方,#13リンパ節および胸水に印環細胞癌を伴う腺癌の組織像を認め,別病変からの転移が示唆された.22年前に他院にて早期胃癌(印環細胞癌を伴う低分化腺癌)の手術歴があり,術後の上部消化管内視鏡で残胃に多発扁平隆起病変を認め,生検で印環細胞癌と診断された.術後のFDG-PET/CTでは右胸膜,右肺門部リンパ節,残胃および腹部傍大動脈リンパ節にFDG集積を認めた.結語.肺癌以外の癌が肺転移を伴わずに肺内リンパ節に転移することは極めて稀である.本症例の肺内リンパ節転移の機序としては逆行性リンパ行性転移の可能性が高いと考えている.
背景.原発性肺癌において,画像検査機器の発達により開胸時に悪性胸水や胸膜播種を認める症例は比較的まれとなっている.粘液産生腫瘍の粘液塊が胸腔内に露出した原発性肺癌の手術例を経験した.症例.77歳男性.X年8月に健診で胸部異常影を指摘.CTで左S8に最大径68 mmの充実性陰影が認められた.近医で経気管支肺生検を施行され,腺癌の診断.精査でリンパ節転移や遠隔転移は無く,経過中に明らかな胸水の出現なども無かったため,左肺癌cT3N0M0に対して手術を施行.胸腔内に胸膜播種,胸水は無く,開胸時洗浄細胞診は陰性であった.左S8にインデントを伴う腫瘍が存在し,横隔膜面に黄色の粘液塊を認めたが,吸引しても付着して外れなかったため,型通り左下葉切除を行った.迅速組織診で気管分岐下リンパ節に転移を認め,リンパ節郭清は2a-2群とした.手術時間は2時間48分,出血量は10 ml.病理結果は浸潤性粘液性腺癌成分を伴うコロイド腺癌で,コロイド腺癌の粘液塊が胸膜表面に露出していた.結論.粘液塊が露出した原因として経気管支肺生検による胸膜損傷または腫瘍の臓側胸膜浸潤が疑われた.
背景.転移性肺腫瘍がびまん性肺疾患に類似の陰影を呈することは稀である.症例.72歳男性.乾性咳嗽,労作時呼吸困難を訴え当科受診し,胸部CTで小葉間隔壁の肥厚とともに,両肺びまん性に微細な粒状影が指摘された.過敏性肺炎の疑いで抗原回避を目的に入院となった.入院後陰影に改善なく,経気管支肺生検が実施され原発不明がんの肺転移の暫定診断となった.原発巣の検索中に腹部に軟部腫瘤,腹水が出現し,腹水セルブロックで中皮腫の診断となった.これを受けて肺組織を再検討し,免疫染色を追加し腹膜中皮腫の肺転移と診断確定した.結論.広範なびまん性小粒状影を呈し,びまん性肺疾患との鑑別を要した腹膜中皮腫多発肺転移の1例を報告する.
背景.化学放射線治療中の腫瘍内膿瘍は,肺癌に対する治療を中断せざるを得ないことがある.症例.51歳,男性.胸部CTで左上葉に38 mm大の充実性腫瘤を認め,気管支鏡を行い,腫瘤からの生検で非小細胞肺癌の診断となった.左肺門,縦隔リンパ節に複数の転移があり,化学放射線治療を開始した.治療開始後早期に発熱と急速な原発巣の増大を認め,経気管支生検に続発した腫瘍内膿瘍として抗菌薬を開始し,化学放射線治療を休止した.抗菌薬のみでは改善を得られず,気管支鏡的排膿を行うことで腫瘍内膿瘍は改善した.その後化学放射線治療を再開,完遂し,現在デュルバルマブを投与している.結論.化学放射線治療中に発症した腫瘍内膿瘍に対して気管支鏡的排膿を行うことで,感染症のコントロールがつき,化学放射線治療を完遂することができた.