肺癌
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最新号
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総説
  • 加島 淳平, 谷田部 恭
    2024 年 64 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    術前治療としてのチロシンキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検討する臨床試験が多数行われている.迅速な薬剤開発を念頭に,予後と相関するとされる切除材料における病理組織学的な治療効果がエンドポイントとして用いられることが多くなっている.指標としてはviableな腫瘍細胞が消失している状態である病理学的完全奏効(pathologic complete response,pCR),および原発巣の腫瘍床に占める残存腫瘍の割合が10%以下と定義される病理学的著効(major pathologic response,MPR)が用いられるが,正確な判定には肉眼的な観察に基づいた十分な組織の切り出しが必要である.世界肺癌学会は具体的な治療効果判定の際の注意点,判定基準を発表し,評価法の標準化を図っている.これに沿うように日本肺癌学会からも肺癌取扱い規約としての病理学的判定基準が公開された.今後日常診療においてもpCRやMPRの意義の評価がなされるようになり,予後の層別化,ひいては術後の治療方針の決定に寄与することが期待される.

  • 藤本 伸一
    2024 年 64 巻 4 号 p. 269-275
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    切除不能例や術後再発を来した胸膜中皮腫に対しては薬物療法が治療の中心となるが,治療選択肢は限られ予後不良である.全身状態が良好な症例にはプラチナ製剤併用療法,特にシスプラチンの使用が可能であればシスプラチン,ペメトレキセド併用療法を行うことが標準治療と位置付けられてきた.近年の免疫チェックポイント阻害薬の登場によりようやく新たな治療選択肢が加わり,長期生存例もみられるようになってきている.国内で行われた臨床第II相試験(MERIT試験)に基づきニボルマブが二次治療以降のレジメンとして2018年に世界に先駆け国内で承認され,2021年にはCheckMate 743試験の結果に基づき一次治療としてニボルマブとイピリムマブの併用療法が海外及び国内においても承認され,新たな標準治療と位置付けられている.免疫療法における有害事象のマネジメントや,効果や有害事象を予測するバイオマーカーの確立が課題である.さらなる治療成績の改善に向けて,化学療法と免疫チェックポイント阻害薬の併用や,新たな分子標的治療や免疫療法などが注目されている.

  • 関川 元基, 釼持 広知
    2024 年 64 巻 4 号 p. 276-282
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    非小細胞肺癌のI~II期とIII期の一部では,外科切除が治療の中心を担ってきた.外科切除のみでの治療成績は十分であるとは言えず,周術期に細胞障害性抗癌剤を追加する試みが行われてきた.しかし,進行肺癌に対する目覚ましい治療開発と比べて,周術期薬物療法においては目立った新規治療の臨床応用は最近までなかった.しかし,近年進行肺癌で成果を挙げた免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の周術期への臨床導入が行われるようになり,周術期薬物療法は新たな時代に入った.最新の臨床試験結果を踏まえ,非小細胞肺癌の周術期薬物療法について解説する.

原著
  • 小玉 勇太, 白髭 彩, 松浦 彰彦, 廣島 正雄, 都島 悠佑, 山田 悠貴, 田中 麻里, 稲垣 雅康, 竹山 佳宏, 横山 俊彦
    2024 年 64 巻 4 号 p. 283-289
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.胸腺癌は希少癌で,既存の報告は外科症例が中心であり,内科症例も含めて包括的に検討した報告は少ない.そこで,当院の胸腺癌全例について臨床的に検討した.方法.2009~2022年の間に胸腺癌と診断された34例を後ろ向きに解析した.観察期間は2023年10月までとした.結果.診断時年齢中央値68歳.組織型は1例を除き全例扁平上皮癌であった.Stage(正岡分類)I/II/III/IV期は2/8/7/17例であった.5年生存率はI+II/III/IV期で90/80/32%であった.初回治療内容はI/II期全例で手術単独もしくは術後放射線併用による根治的治療を受けていた.化学療法単独群の奏効率は一次/二次/三次治療で,38%(3/8例)/22%(2/9例)/0%(0/6例)であった.二次治療以降で部分奏効が得られたレジメンは,二次治療でレンバチニブを使用した2例のみであった.結論.当院ではIII・IV期症例が全体の7割を占めていた.抗癌薬の効果を鑑みると,レンバチニブは二次治療以降早期に使用を考慮すべきである.

  • 長谷川 一男, 大西 幸次, 青島 央和, 西村 邦裕, 飯泉 桜, 平岡 学, 澤 祥幸
    2024 年 64 巻 4 号 p. 290-300
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    目的.患者視点での個別化医療の現状を明らかにし,最適な個別化医療の達成のために必要な因子を同定することを目的とし,18歳以上の非小細胞肺癌患者を対象に肺癌関連遺伝子検査の実施状況および当該検査に対する認識を調査した(UMIN000048933).方法.調査は,2022年10月にウェブアンケート形式で実施した.結果.回答を得た222名のうち適格基準に合致した214名を解析対象とした.遺伝子検査を受けたことがある患者で,遺伝子検査の対象となる遺伝子数の説明,遺伝子検査後の流れに関する説明を受けた患者の割合はそれぞれ56.7%,61.1%であった.治療方針に満足している割合は,遺伝子検査前に説明を受けた患者,説明を受けなかった患者でそれぞれ87.0%,68.6%であった.医師からの遺伝子検査結果の説明を理解できたと回答した患者の割合は69.0%であった.遺伝子検査の実施意向では,約8割の患者が,身体的・金銭的負担や検査結果入手までの期間が増しても多くの遺伝子異常を調べたいと回答した.結論.本調査結果や検討内容は,肺癌患者が最適な個別化医療を受けられる環境の構築に有用な知見を供すると考える.

症例
  • 高田 直哉, 平岩 七望, 小来田 佑哉, 辻 洋美, 安岡 弘直, 坂巻 靖
    2024 年 64 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.肺癌肉腫は,非小細胞癌と異所性肉腫とが混在する腫瘍で,稀な肺原発悪性腫瘍である.症例.83歳男性.重喫煙歴あり.19年前に肺扁平上皮癌に対し右肺上葉切除施行.病変は左肺上区,全体径2.5 cmのpart solidなすりガラス像で肺癌が疑われた.気管支鏡検査で診断確定に至らず,診断兼治療目的に手術となった.左肺上大区切除を施行した.切除肺内には標的病変とは別の結節を認めた.病理診断は,肺癌肉腫(pT1cN0M0)と扁平上皮癌(pT1bN0M0)の同時重複肺癌であった.肺癌肉腫は腺癌成分と軟骨肉腫成分からなった.術後補助療法は行わず,術後1年現在経過観察中である.結語.本症例のように異時性多発肺癌として出現し,かつ扁平上皮癌との同時重複例としての肺癌肉腫は極めて稀である.

  • 洪 雄貴, 山﨑 順久, 坂口 泰人, 田中 宏和, 園部 誠
    2024 年 64 巻 4 号 p. 306-309
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.気管内悪性腫瘍は非常にまれな腫瘍であり,発見及び診断に難渋することが多い.今回,原発性肺癌手術後の経過観察中に気管癌を発症した症例を経験したので報告する.症例1.81歳,女性.右下葉肺扁平上皮癌に対して右中下葉切除及びリンパ節郭清を施行した.術後3年6ヶ月のCTで気管壁の肥厚を認めた.気管支鏡下の擦過細胞診で扁平上皮癌と診断した.症例2.81歳,男性.右下葉肺扁平上皮癌に対して右肺下葉切除及びリンパ節郭清を施行した.術後2年6ヶ月に撮影したPET-CTで気管周囲の異常集積を認めた.気管支鏡下の擦過細胞診で扁平上皮癌と診断した.症例3.73歳,男性.左下葉肺扁平上皮癌に対して左肺下葉切除及びリンパ節郭清を施行した.術後5年10ヶ月のCTで縦隔から右頚部に進展する腫瘤を認めた.頚部よりエコーガイド下生検を施行し,扁平上皮癌と診断した.術後5年のCTで気管内病変を認め,右頚部に進展したと考えられたため原発性気管癌と考えた.結論.画像検査で気管内結節を疑った際に気管支鏡検査及び生検を行うことは必須である.

  • 齋藤 優雅, 西村 和幸, 東 守洋, 荒川 直緒子, 阿部 和大, 松井 奈穂子, 鳥山 碧, 藤本 紗代, 永井 智仁, 小山 邦広
    2024 年 64 巻 4 号 p. 310-314
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.癌の自然退縮は稀ではあるが感染症罹患後や生検後に縮小した報告もあり,免疫学的機序との関連が示唆されている.症例.88歳女性.X年9月下旬から前胸部痛が出現し,同年10月にCTで右肺上葉に胸膜浸潤を伴う5.5 cmの腫瘤と右肺門縦隔リンパ節の腫大を認めた.気管支鏡下肺生検では診断に至らず,同年11月にCTガイド下針生検を施行し扁平上皮癌マーカー陽性非小細胞肺癌と診断したが,高齢のためbest supportive careの方針となった.X+1年1月よりX線写真で腫瘍は縮小傾向を示した.同年5月のCTでも腫瘍は縮小していたが,新規に左鎖骨上窩リンパ節の腫大を認めた.同年10月のCTでは腫瘍と近傍リンパ節はさらに縮小,左鎖骨上窩リンパ節腫脹は消退を認めた.X+2年2月,X線写真で再発所見なく前胸部痛も改善していた.診断時の病理所見ではCD8陽性およびCD4陽性T細胞が腫瘍内と周囲に浸潤し,腫瘍細胞の一部ではアポトーシス像を認めた.結論.生検後に自然退縮を認めた,高齢者の非小細胞肺癌の1例を経験した.生検による侵襲が免疫応答を引き起こした可能性がある.

  • 越野 友太, 角 俊行, 鈴木 敬仁, 池田 拓海, 山田 裕一, 慶谷 友基, 青栁 美穂, 上原 浩文, 有岡 琴美, 千葉 弘文
    2024 年 64 巻 4 号 p. 315-320
    発行日: 2024/08/20
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル オープンアクセス

    背景.近年,免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)は非小細胞肺癌の術前補助化学療法(neoadjuvant chemotherapy:NAC)に使用されるようになった.肺癌診療医は過去に様々な免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)を経験してきたが,irAEとしての胸膜炎は稀であり,ICIを併用したNAC後に発症した報告はない.症例.63歳男性.右上葉肺扁平上皮癌(cT2aN1M0,cStage IIB)に対してICI併用NACを行った.右上葉切除を行い術後病理では病理学的完全奏効だったが,術後第22病日に発熱と呼吸困難を訴えた.右胸水貯留を認め,胸水検査では細菌感染の所見がなく,胸水中のリンパ球増多を認めたことからirAE胸膜炎と診断した.プレドニゾロンの投与により胸膜炎は軽快した.結論.ICI併用NACを行い,外科切除が行われた後の胸水貯留は,補腔性胸水や細菌性胸膜炎以外にもirAE胸膜炎を鑑別に挙げる必要がある.

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