肺癌
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症例
腋窩平滑筋肉腫合併肺癌術後に十二指腸転移を来した1例
豊 洋次郎大政 貢志熊 啓奥田 雅人瀧 俊彦
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2008 年 48 巻 7 号 p. 846-849

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抄録

背景.肺癌の消化管転移は比較的稀であり,さらに十二指腸転移は極めて稀である.最近ではダブルバルーン内視鏡,カプセル内視鏡による全消化管検査も可能であるが,まだまだ普及しておらず,検査方法も限られているため,発見時には既に進行しており治療対象とならないことが多い.また,腋窩平滑筋肉腫も極めて稀である.症例.左上葉肺癌の術前検査にて右腋窩皮下に腫瘍が確認された.転移としては非典型的であったため,多重癌と考え,左上葉切除+ND2aおよび右腋窩腫瘍切除術を施行した.病理組織学検索の結果,右腋窩皮下平滑筋肉腫を合併した肺腺癌と診断した.右腋窩局所再発に対し再手術を施行した後,突然の下血を認めた.上部消化管内視鏡検査にて肺腺癌の十二指腸転移が確認されたが,後腹膜,膵臓へ浸潤しており,治療は困難であった.結論.肺腺癌に平滑筋肉腫を合併した1症例を経験した.平滑筋肉腫の予後因子としては腫瘍径と切除マージンが重要であるとされ,マージン追加切除にて再発は見られなかったが,急速に増大する肺癌の十二指腸転移巣に対しては治療不可能であった.一般的に消化管転移を有する症例は予後不良だが,長期生存する症例もあることより,消化管転移にも留意が必要である.

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© 2008 日本肺癌学会
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