肺癌
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症例
診断および治療経過を観察できた肺腺癌小腸転移の1例
立石 一成小泉 知展漆畑 一寿山本 洋花岡 正幸久保 惠嗣
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 52 巻 3 号 p. 310-314

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抄録

背景.生前中に肺癌患者の転移性小腸腫瘍の診断は困難であるが,ダブルバルーン小腸内視鏡によって診断される報告が散見される.症例.62歳男性.黒色便と貧血を主訴に受診された.胸部単純X線写真で異常影を認め,肺癌が疑われた.出血源の検索に上部・下部消化管内視鏡,腹部造影CTを行ったが,出血源は特定できなかった.カプセル内視鏡およびダブルバルーン小腸内視鏡を施行し,上部空腸に潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.空腸組織の組織診断で異型細胞を認め,免疫染色でthyroid transcription factor-1(TTF-1)およびPE10が陽性であった.肺原発の低分化型腺癌および転移性小腸腫瘍と診断した.化学療法としてcisplatinおよびpemetrexed併用療法を4コース施行した.経過中に腹部症状は認めなかった.肺野病変は不変であった.化学療法後,ダブルバルーン小腸内視鏡を再検したところ潰瘍は瘢痕化し,輸血を施行せずに貧血は改善した.結語.肺癌からの転移性小腸腫瘍における化学療法の治療効果を内視鏡的に観察した報告はないため,報告した.

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© 2012 日本肺癌学会
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