肺癌
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症例
広範な肺浸潤を伴った巨大悪性孤立性線維性腫瘍の1例
石田 格大浦 裕之半田 政志八重樫 弘冨地 信和渋谷 丈太郎
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2012 年 52 巻 6 号 p. 902-907

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抄録

背景.孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:SFT)は未熟な間葉系細胞を発生母地とする比較的稀な紡錘形細胞腫瘍で,臓側胸膜から有茎性に胸腔内へ発育し,組織学的に良性であるものが多い.症例.62歳女性.咳と呼吸困難を訴え,胸部CTで右胸腔を占拠する巨大腫瘍を認め,治療目的で当科へ紹介された.術前に確定診断は得られなかったが,巨大腫瘍が心臓および肺を圧迫し,高度の呼吸困難を伴ったため緊急手術を行った.腫瘍は肺実質に広範に浸潤しており,腫瘍とともに右肺全摘術を行った.腫瘍最大径は25 cmで,肉眼的には葉間胸膜から発生した腫瘍が肺実質内に深く浸潤増殖し,中間気管支幹および肺動脈に浸潤していた.組織学的には紡錘形の腫瘍細胞がmyxoidな基質を伴い不規則に増殖し,多数の核分裂像を認め,また腫瘍内に出血や壊死がみられた.免疫組織染色で腫瘍細胞はCD34,bcl-2に陽性,AE1/AE3,S-100,α-SMAに陰性で,悪性SFTと診断された.結論.広範な肺浸潤を伴い,組織学的に悪性の像を示す稀な巨大SFTを経験した.SFTの確定診断には免疫組織染色が有用であった.

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© 2012 日本肺癌学会
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