抄録
背景.肺癌は脳転移,癌性髄膜症を起こしやすい悪性腫瘍である.癌性髄膜症のうち,脳腫瘍からの脳脊髄液を介した播種硬膜内髄外転移という病態が重要で,これをいわゆるdrop metastasisという.この転移形態は脳脊髄液の流れや重力が関与し,感覚神経を侵し,背部痛,殿部痛,膀胱直腸障害などをきたすのが典型的である.症例.症例は肺腺癌,多発脳転移を呈する60歳の男性(cT2aN2M0,stage IIIA).経過中に馬尾症状などの脊髄症状を呈した.Gd造影脊髄MRI(T1強調画像)ではS1/2に増強効果を受ける結節と馬尾への増強効果を認め,脳転移巣からのdrop metastasisと診断した.Drop metastasisは危険因子としてテント下(後頭蓋窩)の腫瘍の存在が指摘されているが,癌種や組織型は関与しないとされる.診断に関してはGd造影脊髄MRI(T1強調画像)が有用である.結論.テント下に転移のある肺癌患者が,その脳転移では説明できない脊髄症状を呈する場合は,早期に脊髄造影MRIを施行すべきである.