肺癌
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症例
髄膜癌腫症単独で術後12年目に再発したEGFR遺伝子変異陽性早期肺腺癌の1例
中村 慧一藤田 結花森 千惠鈴木 北斗黒田 光高橋 政明山崎 泰宏藤兼 俊明辻 忠克
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 60 巻 3 号 p. 192-196

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抄録

背景.髄膜癌腫症は肺癌の合併症の一つである.ただし多くの患者は髄膜以外に転移性病変を伴う.早期非小細胞肺癌では,手術後4年以降の再発率は低下する.我々は髄膜癌腫症単独で術後12年目に再発したepidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異陽性早期肺腺癌の1例を経験した.症例.77歳女性.物忘れと歩行困難があり,当院を受診した.脳造影MRI検査では異常がなかった.髄液細胞診で腺癌細胞を検出し,EGFR遺伝子変異(L858R)を認めた.髄膜以外に腫瘍性病変を認めなかった.12年前に手術した肺腺癌の切除標本からも髄液細胞診の腺癌細胞と同じEGFR遺伝子変異(L858R)を認めたため,髄膜癌腫症単独で術後再発した肺腺癌と診断した.エルロチニブの投与により症状は改善した.結論.肺癌の手術後に進行する認知機能低下などの神経症状を認めた症例は,画像検査で異常がない場合でも,髄膜癌腫症を疑って髄液検査を考慮すべきである.

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© 2020 日本肺癌学会
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