肺癌
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症例
COVID-19ワクチン接種後に肺血栓塞栓症を合併した原発性肺癌の1切除例
山田 典子
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 62 巻 3 号 p. 235-241

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抄録

背景.新型コロナウィルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)ワクチン接種の有害事象として血栓症が報告されている.ワクチン接種後に肺血栓塞栓症を発症した原発性肺癌の切除例を経験した.症例.74歳男性.COVID-19ワクチン2回目接種後3日目より息切れが出現した.単純CTでは左上葉に37 mm大の結節を認めるのみであった.9日目に症状が増悪し酸素飽和度89%,D-dimer 25.9 μg/ml,造影CTで両側肺動脈血栓,左膝窩動静脈血栓を認めた.アピキサバン内服開始5日目には酸素不要となり,D-dimerも7.4 μg/mlと低下した.左上葉結節は原発性肺癌T2bN1M0 stage IIBと診断した.血栓消失とD-dimer正常化を確認し,肺血栓塞栓症発症後3か月目に胸腔鏡下左上葉切除術を施行した.肺動脈の血管鞘は肥厚し剥離に難渋した.術後血栓症の再発は認めていない.結論.COVID-19ワクチン接種後の血栓症は,稀であるが重症例が多く致死率も高いと言われている.今後有害事象を伴った肺癌症例も増加すると予想され,病態解明や治療方針の確立が期待される.

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© 2022 日本肺癌学会
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