2022 年 62 巻 7 号 p. 1014-1020
背景.視触診困難な肺腫瘍を部分切除する際にはマーキングが用いられる.Virtual-assisted lung mapping(VAL-MAP)では肺表面に複数のマッピングを置くことで,従来のマーキングよりも切除範囲をより正確にシミュレーションできる.色素にindocyanine green(ICG)を使用すれば視認性は非常に良好である.一方で,VAL-MAPは深部のメルクマールとはならず,中枢側のマージンが近接するリスクがある.我々はICGを気管支壁に局所注射し,中枢側のメルクマールに用いる方法を考えた.症例.87歳,女性.6年前に肺腺癌に対し右肺S1+2a区域切除が行われた.Ground-glass noduleが新たに左上葉に出現し,診断的治療目的に楔状切除を計画した.ICG-VAL-MAPで肺表面に3カ所のマッピングを置き,病変中枢側のB4b気管支壁にICGを局所注射した.術中には葉間から気管支壁局注ICGが確認され,深部のメルクマールに用いて楔状切除を行った.切除マージンは2.2 cm確保された.有害事象は認めなかった.結論.気管支壁局注ICGは中枢側のメルクマールとして機能し得る.