2024 年 64 巻 2 号 p. 124-132
背景.悪性腫瘍患者は時に様々な神経障害を合併するが,自己免疫学的機序により生じる一群を傍腫瘍性神経症候群(PNS)という.PNSに併存する悪性腫瘍として,小細胞肺癌が最も多いと知られる.腫瘍の発見に先行した神経症状により,小細胞肺癌の診断に至り,治療奏効と共にPNS関連抗体価が低下したPNSの2例を報告する.症例1.63歳.女性.意識障害で救急搬送となった.画像検査では,意識障害の原因は特定できなかった.その後,胸部に増大傾向の腫瘤を認めた.精査の結果,限局型小細胞肺癌に伴うPNSの診断となりシスプラチンとエトポシド,加速過分割照射で治療を開始した.神経症状は治療奏効により改善し,PNS関連抗体の低下を得られた.症例2.73歳.女性.胸部異常陰影で紹介となった.紹介前は数回の痙攣発作を認めていた.精査の結果,進展型小細胞肺癌とPNSの診断となり,カルボプラチンとエトポシド,アテゾリズマブで治療を開始した.治療奏効により神経症状が改善し,PNS関連抗体は消失した.結論.原疾患の改善により2例共神経症状が軽快し,PNS関連抗体の低下を認めた.