肺癌
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症例
ほぼ充実性の癌腫で神経内分泌性と粘液産生とが同一細胞に観察され,さらにTRU型の乳頭型腺癌部分も認めた稀な1症例:amphicrine carcinoma(両分泌癌)の可能性
副島 康平松岡 英仁桐生 辰徳小谷 義一加島 志郎
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2025 年 65 巻 3 号 p. 198-202

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抄録

背景.Amphicrine carcinoma(両分泌癌)は同一細胞内に神経内分泌分化と粘液産生性腺細胞分化を認める腫瘍で肺原発は稀である.症例.73歳男性.胸部CTで左舌区に径12 mmの充実型結節病変を指摘された.CT下生検で神経内分泌腫瘍が疑われ,原発性肺神経内分泌腫瘍(cT1bN0M0, c-Stage IA2)と判断し,消極的縮小手術として胸腔鏡下左肺上葉部分切除術を施行した.術後病理検査ではTTF-1陽性のterminal respiratory unit型の乳頭型腺癌部分も一部認めたが,ロゼット様構造を伴うほぼ充実性の浸潤性増殖像が主体で組織内に粘液含有細胞が認められた.免疫染色では充実性の部分で神経内分泌マーカーがびまん性に陽性であり,同一細胞の細胞質でdiastase periodic acid-Schiff染色が陽性だった.以上より原発性肺両分泌癌の可能性のある神経内分泌癌(pT2aNxM0,p-Stage IB)と診断した.術後にカルボプラチン+エトポシドの補助化学療法を行ったが,顕著な好中球減少のため1コースのみで中止となり,術後8か月で早期再発死亡した.結論.原発性肺両分泌癌は予後不良であり,適切な診断による症例の蓄積により治療方法の確立が望まれる.

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© 2025 日本肺癌学会
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