肺癌
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腫瘍切除と化学療法で9年間生存中のD2肺腺癌の1例
山田 昌弘塚本 東明
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1993 年 33 巻 7 号 p. 1071-1076

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抄録

原発性肺癌で胸膜播種を有しながら9年間生存中の症例を報告する. 症例は手術時64歳の女性で左S5に13×19mmの陰影あり手術. 開胸時臓側及び壁側胸膜に胸膜播種を多数認め, D2と判定. 胸水の貯留はなかった. 手術は左S5に存在する腫瘍のみ切除し, 術後胸腔内にMMC+CPM, MMC+OK432を各々1回ずつ注入し, さらに, 5-FU+MMC+Ara-Cなどの化学療法を施行した. 外科病期はT4N2M0, stage III B. 病理組織型は中分化腺管型腺癌で, 播種巣でも同様の所見であった.
術後6年目と7年目のCT検査で肺野末梢に直径0.3~0.5cmの小結節陰影を認めるが, 他の臓器には遠隔転移を認めず. 術後9年を経た現在, 担癌状態ではあるがP. S. Oで外来通院中である. D2における絶対的非治癒切除例での長期生存例はまれで, 化学療法が著効したか, 自然経過の長い腺癌かと思われるが, 今後このような症例に対し, QOLを考慮しつつどの様な治療法を選択するか考えさせられた.

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