抄録
原発性I期非小細胞肺癌切除例67例を対象としてVEGF蛋白およびp53蛋白の発現と予後との関連を免疫組織学的に検討した. VEGF蛋白は67例中20例 (30%), p53蛋白は57例中26例 (46%) が陽性であった. VEGF蛋白の陽性率は腺癌で有意に高かった (p=0.011). 分化度, T因子, p因子別では有意差を認めなかった. 再発はVEGF陽性例で有意に多く, 特に遠隔転移症例が多かった (p=0.016). 予後との関連はVEGF陽性例の生存期間中央値は52.2カ月で陰性例の78.5カ月に比べ有意に予後不良であった (p=0.0054). p53蛋白発現の有無と再発, 生存率には関連を認めなかった. p53蛋白陽性例におけるVEGF蛋白陽性率はp53蛋白陰性例のそれに比べ高かったが, 両蛋白発現の相関は認めなかった. I期非小細胞肺癌においてVEGF蛋白の発現は予後因子になり得ると思われた.