2000 年 40 巻 7 号 p. 759-763
症例は47歳, 男性.会社員.既往歴に特記すべきことはない.平成9年11月の検診では異常なかったが, 平成10年11月の胸部X線で異常陰影を指摘された.画像上左胸腔内に小児頭大の腫瘤があり, 肺静脈, 舌区および胸壁浸潤が疑われた.生検でthymomaと診断され化学療法 (ADOC) を2コース施行した.効果は縮小率11%でNCであった.その後胸骨正中切開に後側方開胸を追加して, 拡大胸腺摘出術, 心膜合併切除, 左上葉切除, S6合併切除を行った.切除標本で腫瘍は心膜および左上葉に浸潤し, 正岡III期であった.断端の腫瘍細胞は陰性で, 完全切除であった.免疫組織学的検討ではbc1-2とKi67 (MIB-1) で高い染色性を示し, 高度の細胞増殖能を示した.また013 (MIC2) による染色で腫瘍内浸潤リンパ球は未熟リンパ球と考えられ, 胸腺癌ではなくatypical thymomaと診断された.リンパ球表面マーカーの解析は胸腺腫と胸腺癌の鑑別に有用であった.