肺癌
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再発時に肺動脈幹内への高度浸潤進展を示した肺原発悪性線維性組織球腫の1例
山下 良平寺畑 信太郎角田 清志
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2000 年 40 巻 7 号 p. 771-775

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抄録

再発時に肺動脈幹内への高度浸潤進展を示した肺原発悪性線維性組織球腫 (MFH) の1例を経験した. 症例は70歳女性. 1995年5月15日, 左肺下葉の長径6.5cmの腫瘍に対して下葉切除術を行い, 病理学的にstoriform-pleomorphictypeのMFHと診断された. 術後経過良好であったが, 98年6月, 左肺門部での再発が明らかとなった. 画像所見上, 腫瘍が左肺動脈幹内へ浸潤進展している像を認めたが, 遠隔転移の所見がなかったため, 98年7月10日, 残存肺摘除術を行った. 切除標本では, 肺門部に暗赤色の充実性腫瘍が, 多結節状に集簇発育しており, その一部は左肺動脈幹内へと連続性に進展していた. 術後は呼吸不全を合併したが, 10月17日, 軽快退院した. その後の経過は良好であったが, 99年7月, 造影CT上, 右肺動脈幹内に血栓を思わせる陰影欠損を認め, 再々発腫瘍が, 右肺動脈幹内へ浸潤進展したものと考えられた. 99年9月17日, 死亡した.
MFHなど肺原発の肉腫は元来まれであるが, これらの腫瘍では本例で見られたような肺動脈内腔への高度の浸潤進展を示すことがある. 従って肺腫瘍において肺動脈血栓類似の所見を見た場合には, 鑑別疾患上, MFHなどの肉腫も考慮すべきと考える.

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