抄録
最近、我々は、キニジンから導いたβ-イソクプレイジン(β-ICD)とフッ素原子で活性化された1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリラート(HFIPA)とのコンビネーションによって、高光学純度の生成物を与えるアルデヒドの触媒的不斉Baylis–Hillman反応を開発した(Scheme 1)。今回、本反応の適用性をさらに開拓すべく、イミンを基質とする触媒的不斉Baylis–Hillman反応を新たに検討した。その結果、窒素原子をPh2P(O)等の電子求引基によって活性化したイミンの場合、高収率で反応が進行し、α-メチレン-β-アミノ酸誘導体の前駆体として有用なS配置のエステルが優先的に得られることを見出した。興味深いことに、このエナンチオ選択性はアルデヒドの場合とは逆であった。また、ジフェニルホスフィニルイミンの Baylis–Hillman 生成物は結晶性が良く、反応後再結晶により、光学的にほぼ純粋なS配置の化合物が得られることを見出した(Table 1)。最近、ShiらおよびAdolfssonらはβ-ICD触媒によるトシルイミンとメチルアクリラートのBaylis–Hillman反応生成物をR 配置であると報告している。しかし、今回の検討により、彼らの絶対配置の決定は間違いであると結論づけられた。本シンポジウムでは、イミンの不斉Baylis–Hillman反応の詳細および水素結合が鍵となる反応機構について発表する。さらに、Baylis–Hillman 生成物からβ-ラクタムの合成についても発表する予定である。