抄録
抗腫瘍性抗生物質ネオカルチノスタチン(以下NCSと略記する)はMyers–Saito型の芳香環化反応によりビラジカルを生じ、このビラジカルがDNAを切断することにより、その生理活性が発現すると考えられている。ここで、活性種と考えられているデヒドロトルエンビラジカルは高いイオン性を有しており、水溶液中ではしばしばイオン的な反応を起こすために、DNA切断活性が低下するという問題点が指摘されている(図1)。我々のグループでは近年この問題点に取り組み、パイラジカル中心に電子吸引基を導入することによりイオン性を抑制した化合物が高いDNA切断活性を示すことを報告した(図2)。本講演では図3に示すようなDNA親和性部位としてポリアミン部位を導入したエンジインモデル化合物の合成、及びそのDNA切断活性について報告する。